あの子の、 笑顔
その子は、私のおばちゃん家の近くに住んでいて、私より4つ下の八歳の女の子です。 名前は、すずさ。ひらがなで、すずさ といいます。おばちゃん家に行くと、必ず庭にいて、 縄跳びをしたり、竹馬をしたりして遊びました。すずさちゃんは、小さいのに、ころころとよく遊びました。 私のことを、「佳代ねえ」と呼び、慕ってくれました。 一人っ子の私にとって、すずさちゃんは、妹のような存在でした。 本当なら、今も、私の目の前にいるはずでした。今も、私と一緒に遊んでいるはずでした。 でも、今年の夏、すずさちゃんは私のおばちゃんの家に来ませんでした。 再来年も、その再来年も、、。ずぅっと。 すずさちゃんがこなくなって今年で十四年目です。すずさちゃんの家に行こうにも、道も住所も分からず、途方に暮れました。 唯一、すずさちゃんのことを知っていたおばあちゃんは、もう、ものぼけが始まっていて、覚えていませんでした。 私は、今、二十六歳です。今年、結婚が決まって、このちかくで式を挙げるので、寄ってみた次第でした。 すずさちゃんは、今年も、家の前に来ることはありませんでした。この家は、もうじき取り壊されることになり、 この家に来るのは、これで最後になりそうでした。庭の物置の隙間から、懐かしい思い出が今にも溢れそうでした。 その時、「佳代ねえ?」後ろから、名前を呼ばれました。その呼び方に聞き覚えがありました。ゆっくりと振り向きました。 そこには、綺麗に髪を結い、大人っぽい服を着た、見覚えのある顔がありました。 「すずさちゃん!!」思わず抱きついてしまいました。「佳代ねぇ、、!!」 そのあと、すずさちゃんから聞かされた内容に、耳を疑いました。まず、私たちは、親族であって、血のつながっていたということ、 しかし、私達は別々に育てられてしまったこと、二人が出会ったことを知って、お母さん達が私達を離したこと、 そして、私が結婚することを知って、もうあえなくなることを覚悟に、ここまできてくれたこと、そして、今出会えたこと。 まるで、漫画やお話の主人公だ。 会えて、良かった。 すずさちゃんはにっこり笑うと、用事があるから、と去っていった。すずさちゃんの笑顔は、懐かしい思い出を 感じさせる、いい匂いがした。