雨は朝に咲く花を育てる
ざー、ざー 「ハァ、ハッーーッハァ、ゼェゼェ」 すごい雨が降ってた日。 両親から追い出されて、熱で前も見えないまま歩いてた。足の感覚もなかったけど、家に帰りたくなくて、必死で、勝手に体が動いてた。 いきなり前が見えなくなって、思わず建物の壁に寄りかかって座り込む。苦しい、誰か助けて、たすけて、たすけてーー 「あの、大丈夫、ですか、、?」一瞬、雨が止んだ。見上げたら、女の子が傘を差してくれてる。誰だろう、この辺に住んでるのかな。 「、ぁ、、ぁ、、」声を出そうとするけれど、やっぱり出ない。小学校から、声の出し方を忘れて、それ以来まともに人と会話ができない。ストレスで出なくなるって聞くけれど、自分も当てはまるのか。 この人なら、助けてくれるのかな。そんなこともふと思ったけど、「あの人たち」の顔が脳内に浮かんで、不意に逃げたくなって。 「ーーーッ (たって、にげなきゃ。はやく)、ぁ、」フラッ まるで世界が逆さになったみたいに足がふらついて、そのまま倒れそうになったけど、何かに受け止められた。そうか、この人が支えてくれたのか。あったかい、誰かに抱かれたのって、何年振りだっけ。 雨「、、けて、、」 朝花「、へっ?」 雨「、た、すけ、、て、」 朝花「、ぇ、」 自分の記憶はここまで。あの日、自分は意識を失って、傘を差してくれた「朝花」に助けてもらった。詳しくは、朝花が朝花のお母さん、美香さんに連絡して、家まで運んでくれたんだ。話せない自分と、ノートを使って朝花は会話してくれた。朝花と同い年だとわかって、お母さんは自分のことを可哀想だと思ったのか、しばらく泊めてくれることになった。しばらく熱で辛かったけど、看病してもらって良くなった。看病してもらうのが初めてだったから、緊張したけれど。家族の事情も話したら、朝花のお父さんの光輝さんがカンカンになって怒ってたし、朝花と美香さんは涙目になっていた。俺の両親は、そんなにおかしかったのか。他の家族を見ていなかったので、知らなかった。 今日は、海に連れてってもらったんだ。冬だから寒いっていう朝花を横に、お父さんはすごく張り切ってた。雨に海を見せるぞって。 海って、こんなに綺麗だったんだな、と思った。キラキラした水面を見てたら、ポロポロ頬を伝った涙。 「、うみ、、き、れ、」声が出た。 「雨、、、!!」つられて朝花も泣いてしまった。そんな泣かないでよ、困るって。 朝花は、笑顔が可愛い。太陽みたいな人だ。 病院に行ったら、声もいつか出るようになりますよって、担当の先生が言ってくれた。両親のことは任せなさいって、光輝さんは言ってくれてる。今日言葉に出せたように、いつか、自分の想いも自分の言葉で伝えられたらな。そんなこと考えながら、帰りに車窓から海を眺めた。