短編小説みんなの答え:5

人生100回目に会いに行く。

一度死んでも、残り99回 人生をやり直せる。100回命が繰り返す。 そんな人が、この世にはいるらしい。 授業中に頬杖をつきながら そんなおとぎ話を 思い出していた私は、 いいなあ、なんて思っていた。 私の人生は退屈で、 とてもつまらなかった。 だから一度くらい死んでみて、 その後に生き返ろう。 そんな簡単な覚悟で、 私は学校の屋上に行った。 少し足を出して、 もう覚悟したその時。 私の好きな人、翼(つばさ)が私に何か言った。 「死ぬな!俺はお前を…」 そう言いかけたところで私は 足を滑らせて、屋上から落ちていった。 目が覚めると、知らない部屋だった。 鏡を見ると、私は同じクラスの 山下さんになっていた。 私は人生をやり直すと言うより、 人の命を乗っ取ったんだ。 今ならまだ、 翼が何を言おうとしたのか 聞けるかもしれない。 慣れない家から学校に行って 翼に会った。 「翼!あの時なんて言おうとしてたの?」 私が翼にそう聞くと、 翼は私をみたけど、 暗い顔をして、 私を無視した。 そうだ、私は今山下さんなんだ。 それから何度も翼に 私だと伝えたけど、 当然翼は信じてくれなかった。 意味のない毎日を終わらせるために、 私は山下さんの人生を終わりにした。 それから何度も同じような 人生を送った。 何度死んでも、何度生きても、 誰になっても、 私が欲しいものは手に入らなかった。 あっという間に、翼ももう 高校を卒業する。 私は死を決意して、 99回目の人生を終わらせた。 これで100回目の人生。 目が覚めて鏡を見ると、 私は翼になっていた。 「え…?」 声も、顔も、全て翼だ。 私が翼になったと言うことは、 本物の翼はもうこの世にいないんだ。 まだ、あの時なんていったのかを 聞けてすらいないのに。 私はパニックになって、 翼の机の上のものをあさった。 すると偶然、翼の日記を見つけた。 「1月25日 葉華(ようか)が死んだ。自殺だった。」 葉華とは、私の名前だ。 その一行だけ書かれたページは、 やけにシワシワになっていた。 その後のページには何も書かれていなかった。 ペラペラとめくっていると、 何か書かれたページを見つけた。 「3月18日 もう決断した。俺は本当に、葉華が好きだった。」 3月18日は、昨日だ。 翼は私が死んだのを理由に、 死んだんだ。 涙が溢れた。 幸せは、最初から持っていたのに。 もっと早く気づけていたら、 何か変わっただろうか。 もう全て終わりにしよう。 私は空白だった翼の日記の最後に 「好きだよ」と書き加えて、 翼に会いに行った。

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