針と糸
__私なんて、細くてか弱くて、針や布に色々と左右されて、プツンと切れてしまう糸。 【糸】 私は絲山 沙織(いとやま さおり)。手芸クラブの一員で、小学5年生だ。 今、私は悩める思春期の真っ最中だ。 別に興味のある先輩や、男の子がいるわけでもない。でも、糸でこう、胸がグググ、キュウウッと締め付けられるよう。 私は思わず、指に針を刺してしまった。血は出ていないが、「痛っ」と思わず言ってしまった。 「どうしたの、沙織」 憧れの先輩の針野先輩。本名は針野 鶴菜(はりの つるな)。 針野先輩と私で、鶴の恩返しコンビと呼ばれている。なぜって?鶴菜の鶴、沙織の織で何ができると思う?鶴は、恩返しのために機織りをしたでしょ?そういうこと。 「な、なんでもありません……」 「バレバレだよ?ほら、ここ」 「あっ……」 「大丈夫。あたしに任せて」 針野先輩は(ここからは鶴菜って呼ぶね)は私のミスに気がついた。普段、集中してミスがほとんどない私だからきっと心を読むエスパーみたいに私の気持ちを察したのだろう。 「区役所の方に行くんでしょ?帰り」 「え……まあ……」 「じゃあ、一緒に帰ろう!」 「えっ!?」 鶴菜は私の家から遠い。一緒に帰ったら、とてつもない大回りになってしまう。第一、中学受験も考えている鶴菜なのに……。 そんなことを考えているうちに、鶴菜は慣れた手つきでサラサラっと私のミスを直してくれた。 教科書をランドセルに詰めている間、私は鶴菜のことしか考えられなかった。 鶴菜の魅力といえば……。 そう、針のように鋭く、自分の意見が言えて、正義感が強い。リーダーシップ抜群。そして積極的。まさに針。でも、男勝りというわけではなくて、鶴の恩返しの鶴のように優しく、おしとやかで、上品。 まさに完璧な人だ。 それに比べて私は……。 糸みたいに、か弱くって細くてすぐぷつりと切れてしまいそう。 鶴菜と正反対の人だ。 「沙織ー!」 「針野先輩……どうやったら、針みたいになれるんですか?」 「え?」 下校時刻になり、私は鶴菜と遭遇した。 「あっ……すみません、言い方が悪かったです。あの、どうしたら針野先輩みたいに、堂々として……憧れの存在になれるんですか?」 「え?私は沙織が羨ましいくらいだけど?」 「え?」 なぜ、こんな弱っちい私を羨むの? 「だって、色々と仕事頑張ってるでしょ?まさに縁の下の力持ち的存在!私が針だったら、沙織は糸ね。糸は……布と布を繋いだり、努力しないとできない、綺麗な刺繍をしたりできるから、ぴったりね!」 「……」 私は思わず、無言になった。 ……私は、確かに少しだけれど、喧嘩を止められる性格だ。そういうのが、布と布を繋ぐ__人と人を繋ぐ役割だ。 努力しないとできない綺麗な刺繍は、私の努力の結晶。 「ありがとうございます、先輩!」 私には、私の良さがある。 いつの間にか、糸の弱いイメージは無くなっていた。 絶対、針みたいに動く元となるものがなくても動けるようになる。 私はそう、胸に誓った。そして、憧れの針と自分らしい糸の両方の良さを使って、素晴らしい作品__『私』を作り出してみせる。