嘘の、噂
今日も、あの噂で教室がまんたんになっている。 「琢磨くんって、絶対、乃愛ちゃんが好きなんでしょ!?」 乃愛ちゃんはオドオドしている。 これもいつものこと。 他の女の子たちは「ロマンチックー」とか、「分かる、それー」とか グループの中で話している。 男の子たちは、琢磨くん・・・噂をされていたあの男の子と 笑いあう。 「絶対好きなんだろ?」とか、「俺らも協力するからさ、な?」とか言っている。 琢磨くん自身は、戸惑いの顔を浮かべながら、 曖昧にうなずいている。 私は、琢磨くんに恋をしている。 乃愛ちゃんは美人で、性格も素敵で、 ザ・モテる子って感じの子。 琢磨くんはイケメン。 美男美女の組み合わせ、すごい雰囲気もそろっている。 二人同士が近くにいるだけで、 恋人に見えてしまう。 好きな人がいる、という噂の琢磨くんに、 恋、なんてね、叶うわけないけれど・・・・・・。 「好きですッ」 この声は、私の声。 誰もいない教室で、とうとう琢磨くんに告白した。 諦めたかった。 すぐに心をすっきりさせたかった。 「いいよ」 琢磨くんの、声。 え、と言う声が、喉の奥に引っかかる。 「僕、つまらない噂流されてるけど、乃愛ちゃんが好きなわけじゃないんだ。好きな人は、君・・・」 顔を赤く染めて、言う。 琢磨くんの顔は相変わらずイケメンだったけど、 妙に違和感を感じる。 私は、気づいた。 泣いているんだ。 琢磨くんは泣いている。 気付くと、私の頬も生温かくなっていた。 涙がゆっくり流れてきて、 「よろしく・・・・!!!」 声がまた、はっきりと出なかった。 乃愛ちゃんは、どうだったのだろう。 琢磨くんが好きだったのかな。 分からない。だけど、 心がすっきりして、琢磨くんがもっとカッコよく見えて、 自分になぜか「自信」を持てた。