告白リレー
「美穂、どう?練習した?」 「うん。私の中では、バッチリ」 今日はミニ運動会。 私の中学校では、毎年秋になるとミニ運動会を開く。クラス対抗リレーで、1年の部、2年の部、3年の部に分かれて競走。買ったクラスには、一人一人にミニスナックが送られる。1つ10円か1桁くらいで売られてる、安いの。ミニスナックの名前は、なんだったっけな…… でも、ミニスナックは安いくせにめちゃくちゃ美味しい。イチゴ味のポテチをボールみたいにしたので、甘酸っぱさがたまらない。ほんのりしたピンク色も、女子には人気だ。 私は2年の部のアンカーにバトンを渡す。一応、私は女子の中で足が最も速いから、セカンドアンカーに選ばれた。 「しっかり渡せよ?練習の時はヘロヘロで、あわてたんだからな」 「あの時はごめん。でも……私もミニスナかけて頑張るよ」 「おう!」 この無駄に背がバカ高いのは咲斗(さくと)。いつも「咲っていう漢字、女子みたいで嫌」が口グセだ。 咲斗は足が速く、アンカー。最後、バシッと決める。 実は、私、咲斗が好きだ。 だから3クラス中、私たちの2組が1等になったら、告白するつもり。負けたら、ショックで失恋気分になっちゃいそうだからね。 だから、バトンをメッセージのように、バシッと渡す。 「今から、クラス対抗・リレーを始めます!」 先生が言う。 「位置について!ようい……ドン!!!!」 私のクラスの男子が一気に走り抜ける。私のクラスの赤いバトンは腕を振る速さで、見えないくらいだ。 「パス!!」 男子はテイクオーバーゾーン(バトンを渡す範囲のこと)を有効に使い、女子に渡した。 女子は一気に負け、あっという間に最下位。 あーあ……失恋、確定。というほど、差が伸びる。 だいぶ、1組と近づいてきた。 気づけば、もう終わりがけ。次は私の番だ。 「パス!!」 私は男子からバシッとバトンを受け、一気に走る。走る。 告白もかけているんだから。絶対、負けてなんかいられない!! 私の熱意は、凄まじく、もう周りの景色なんて見られなかった。見てられなかった。 目の前、目の前!! いる!!私の彼氏が、いる!! 「パァス!!」 私は大声をあげた。 「おう!」 咲斗は私よりも速く走り抜けた。風にみたい、というレベルじゃない。本当の風のようだ。風を味方にしているようだ。 「ゴール!!優勝はぁ……」 あまりの僅差だった。若干、咲斗が遅かったように見えた。 「2組ぃぃ!!」 「きゃああああっ!!」 私は悲鳴をあげた。悲鳴、というか悲鳴のような嬉しさの声だ。 「そしてぇ、優勝クラスからの最優秀賞を獲得した人はぁ……杉原美穂(すぎわらみほ)さんと西川咲斗(にしかわさくと)さん!!おめでとうございまぁす!賞品はぁ……初恋スナック大袋ぉ!!」 初恋スナック…… そうだ。私は、咲斗との恋が初恋だったんだ。絶対に……告白できる。 私は下校した。汗だくになっている。帰ったら、クーラーが効いた部屋で涼みたいなぁ……ということを考えると、余計暑くなってくる。 「美穂ぉ。俺ら、最優秀賞だってさ」 「いつに間にいたの?まぁ、いいけど」 「俺さ、考えたんだよ。この優勝、お前の足で勝ち取ったんじゃね?って」 「は?」 「だって、お前、多分集中しすぎてたんだろうけど……あのまま、グングン追い抜かしていったんだよ。それで僅差になって、俺にバトンを渡したっていうわけ。だから俺もアツくなって、ギリギリでラストスパートかけたんだ」 え、そうだったの? 「ほい」 「え?」 「お前、好きだろ。これ」 「えっ……でも……」 咲斗は私に初恋スナックの袋を渡してくれた。 「ありがとう……」 袋を開ける。その中には初恋スナックのイチゴの香りが……しない。 「はあ!?」 「ひっかかったなー!」 なにこれ!?袋だけ!?処分してくれっていうの!? 私は袋を返そうとした。すると、ぱらりと紙が落ちた。 「え?」 その手紙には、「好きだ」と書かれていた。 「嘘でしょ?」 「嘘じゃない」 「えー……」 「お願い!付き合ってくれ!!」 「……いいよ。私だって、リレー、優勝したら告白するつもりだったもん」 「そうか……俺と同じだな。さすが俺の彼女」 私はクスクスっと笑い合った。 「それにしても、あの大袋、もう食べちゃったの?」 「え、当たり前じゃん」 「すごっ……」 いつもの会話に戻る。私は内心、すごくドキドキしていた。