【短編小説】カワッテアゲル
「こんにちは、貝通丸君。」 かいつうまる。船の名前のようだが、僕の名字だ。 「君の“代行者”の柄澤(からさわ)だ。よろしく。」 不敵な笑みをして言葉を発する彼、いや彼女かもしれない。中性的なこの人の言葉はいちいち背筋が凍る。 「柄澤、さん。その…本当にいいんですか。虐められてて…不細工な僕の“代行者”なんて。」 「うん。いいよ。…じゃ、この契約書にサインを。」 ぽんっと判子を押すと柄澤は笑った。この人と会ってから初めて暖かい気持ちになった。すると急に______ 「あっははは!まんまと騙されたね?」 柄澤の口角は上がり大声で笑い始めた。そいつは人間じゃないように見えた。 「えっと…どういうこと…」 「説明するとだね、君の居場所は無くなるにだよ。僕は約五年前、代行を頼んだんだ。でも、“代行者”はねぇ、こう言ったんだ。『命の椅子は一つだけだ。お前の居場所はもう無い。』ってね。」 ぞわぞわっと鳥肌がたった。 「それって、つまり…」 「そう。僕は人間界に戻れるんだ。貝通丸になって。君は“代行者”としてずっとここでさ迷ってもらう。」 はっとして辺りを見回すと、自分の部屋だったところが真っ白な空間になっていた。 「さようなら、“代行者”。」 柄澤、いや貝通丸は跡形もなく消え去った。 《終わり》 初心者で下手ですが、感想宜しくお願い致します!