鎖に繋がれたこの恋は。
「そういえば、あんた、決まったわよ。」 ある日、母に言われた。 「え、何が?」 うちはシングルマザーだった。 金の余裕も無く、母は私を奴隷扱いしてきた。 「何って結婚よ結婚。あんたお見合いすんの。」 私、織本千景の婚約は突如決まった。 相手は私と同じ16歳の能美孝宏。 能美家は先祖代々続く名家。 現当主の能美孝明は私に息子とのお見合いを持ちかけた。 金に目が眩んだ母は喜んで私を差し出した。 能美孝宏は整った顔立ちで、頭まで良いらしい。 優秀な後継ぎをなぜ私とお見合いさせたのか意図が分からなかった。 彼に何度か会ったけど、無口無表情、私が好きとは到底思えない。 彼がどれ程私を嫌っていても、決まったものはしょうがない。 私は運命を受け入れ、彼に明るく接した。 「孝宏君LINE交換しよ!スマホ持ってる?」 「孝宏君は何が好き? 私甘い物!今度一緒に食べに行かない?」 相変わらず彼は無口だし、 時折鬱陶しいと言いたげな顔をすることもあった。 でも拒絶したり、声に出して怒ったりなんかしなかった。 母に怒られ、殴られして育った私にはそれがとても嬉しかった。 彼が少しずつ心を開いてくれる度、胸が熱くなった。 そして今日も、私は彼に会いに行く。 たとえこれが、鎖に繋がれた恋だとしても。 私は絶対、幸せになってやるんだから。