彼の顔が赤い理由。
「ひゅー」と、気の抜けるような音がして、「ドンッ」と大きな音がする。 その音を合図にするように、大きな花が、漆黒の空に咲く。そして、散る。その間0.1秒。 その0.1秒の間に、世界でキセキが起きている。 料理がうまくいったとか、ビールが美味いとか、そんな小さなことから、 交通事故で助かったとか、迷子が見つかったとかの、大きなことまで。 私にも、キセキは起きるかな…、と、ぼんやり思っていたその時、キセキは起きた。 「ドンッ」を合図に、惹きつけられるように、一人の男性に視線が向く。彼と目が合う。そらしたいのに、そらせない。 磁石のS極とN極のように。運命の相手を見つけたかのように。 彼の口が動く。周りが騒がしくて聞こえない。私は耳を澄ます。彼が一歩こちらに近づく。私も一歩、彼の方へ近づく。 今度ははっきりと聞こえた。 「好きだよ」 と。 そこで私は目が覚めた。上を向くと見覚えのある景色が広がっていて、隣にはあの、夢の中の彼がいた。 「私たちが出会ったのも、ここだったね」 隣で彼の頭が揺れる。 「私たちが出会えたのって、キセキだね」 そうだね、と、落ち着いていて、少し力強い声に安心する。 お互いの想いを確かめ合うように、どちらからともなく、指を絡める。 彼の顔が赤い理由、花火のせいじゃないといいな。 そんなことを思う私の顔も、相当赤いんだろう。もちろん、花火のせいではなくて。