今日は走って帰ろう。
今日もあの子が褒められた。 あの子は先生のお気に入り。 それに比べて、私は今日も 誰とも話すことができなかった。 全部自分のせいだとはわかってる。 だけど、私だって頑張ってることを 証明したかった。 唯一自信を持っていた国語の勉強も あの子に越されたし、 運動なんてできないから、 いつもみんなの笑い物。 この前の運動会なんて最悪で、 「もう一生走りたくない」 と本気で思ったのだ。 ランドセルに荷物を入れながら そんなことを考えてはため息をつく。 「明日はいい日になるのかな……」 なるはずない。 心の中の私がそう呟いたけど、 私はいい日になると信じる。 だって、それさえ諦めてしまったら 私は明日学校にも行けないから。 お母さんにまで迷惑をかけるのは嫌なんだ。 「それでは、さようなら」 先生の挨拶が終わった後、 私は重い足をなんとか動かしながら歩いた。 石ころを蹴っていても。 野良猫に話しかけても、 私は喜んでくれない。 どうすれば私は喜んでくれるんだろう。 そもそも、私が楽しくないのに なんで私はこんな思いをしてるんだろう。 私はそう思ってから、 ずっと楽しむ方法について考えた。 私はなんで褒められたいんだろう。 なんで私は走るのが嫌いなんだろう。 疲れるから? いや、違う。 笑われるのが怖いからだ。 私はそう気づいて、 なぜかすごく悔しくなった。 なんで私はそんな考えに 縛られているんだ。 これは、私の人生なのに。 誰かに笑われたって、別にいいよ。 私は走った。 重かった足を持ち上げて 走っていると、 だんだんと足が軽くなっていった。 私、走れてるんだ。 走るって、こんなに気持ちがいいんだ。 頬に冷たい風があたる。 髪が靡く。 私は走る、走る。 坂道を登って見た街の景色は、 不思議といつもより透き通って見えた。 【end】