ショートケーキ
丸いテーブルの上にある一本の蝋燭と、二つに切り分けられたケーキ。 闇に包まれた部屋の中で、青年は一人呟く。 「これが本当の最後の晩餐か…」 真っ黒に染められた部屋の中、その声だけが虚しく響き渡る。 四角い窓に付けられたカーテンを開く。 徐々に近づいて来ているらしい月は、一週間前よりずっと大きく見えた。 真っ白な月の光が当たり、青年は目を細める。 (最期の瞬間くらい君と一緒に居たかったな) いつまでも引きずってはいられないと押し入れにしまったアルバム。 埃を払い、君の写った写真を手に取る。 そこには満面の笑みを浮かべる少女と、笑い慣れていないのであろうぎこちない笑い方の少年の姿。 青年は写真を見ると笑みを浮かべた。 幼い頃よりぎこちない笑顔。 まるで、笑い方も忘れてしまったかのような。 ・・・ ケーキを口に運ぶ。 君の好きだったショートケーキ。 段々と眠くなって来る。 睡眠薬入りのショートケーキ。 眠りに落ちるその瞬間、願う。 「君とまた出逢えますように」