お人形
「愛してる」 照れながらそう言った彼。 きっと、本当に気づいていないのだろう。 彼が浮気していることを、私は知っている。 それも、ずっと前から。 でも、彼との関係性を変えるつもりはない。 だって、貴方は私の大切な「お人形」なんだから。 怖がらなくて良いよ。 私のシナリオ通りに、綺麗に動いてくれれば何もしないから。 私が目立てるように。そのためだけに、彼を利用している。 向こうだってきっと同じだろう。 何度も浮気して他の女と会って何が楽しいんだろうか。 大丈夫。だって、今日で終わりだもん。 何回もシミュレーションした。きっと上手くやれる。 「じゃあね」 私は彼にそう言って、その場を離れた。 何をしたか分かっていないみたいだったから、浮気の証拠をメールで送りつけてやった。 「別れよう」という文章と共に。 どうせすぐに他の人にも広まるだろう。 これで私は悲劇のヒロイン。 ありがとう、お人形になってくれて。 「哀していたよーーー」 雪が降り頻る街で、一人呟いた。