指先を。
私の名前は小野寺実咲、中学一年生だ。私は本格的にピアノを習っている。 「実咲ちゃんおはよう、今日もショパンにチャレンジしてみましょう」 「はい」 先生は優しく、だけど時に厳しく指導をしてくださる。 ーさぁ、今日もおしゃべりしよう。 ピアノの鍵盤に指をのせ、楽譜を見る。初見の演奏、うまくいかないかもしれない。 指先をピアノから流れる音の糸に絡めさせれば、私の指はきれいな音を奏でてくれるはずだ。 ポロン・・・・・・ だいぶゆっくりなスピードだが、心地よいメロディーを私は奏でる。 固まった心がほぐされる。指先は「糸」に絡まって、きれいに音を紡いでいく。 思わずうっとり目を閉じそうになった。やっぱり、ショパンの曲は最高だ。 ・・・・・・終わった。 はーっと息を吐いて、私は鍵盤から指をおろす。 まだ残る「糸」から指先を上手にとり、私は満面の笑みを浮かべた。 「いい曲ですね」 「あなたの演奏もいいわよ」 ありがとうございます、と微笑んだ。この瞬間が日々のどの時間より好きだ。 だから私はピアノが大好き。 この「糸」の連鎖に心酔して、どうしても抜け出せない。 「ピアノは私の人生です」