苦手と好き
私、雨宮はるり(あまみやはるり)。彼氏は大山和樹(おおやまかずき)くん。 今は学校の休み時間だ。 「ほんっと雨宮ってクソ。指示聞き間違えるし」 この人は川山龍翔(かわやまりゅうと)。正直苦手。 今までは黙ってた。でも、今日は、、、。 「指示聞き間違えたことは謝ります。ごめんなさい。でも、クソって言うのはどうかと思う」 言えた。初めて、言えた。少しは謝ってくれるかな。 「は?お前、俺の言ったこと否定すんの?喧嘩売ってる?」 帰ってきた言葉は、想像とは全く違うものだった。 私は、父の言葉を思い出した。 「はるり、自分から喧嘩をしてはいけない。だが、やられたらやり返しなさい」 怖かったが、必死で話した。 「あなたこそ、私のこと否定していますよね。それと、喧嘩なんて売っていません」 「後悔すんなよ」 川山龍翔は、拳を振り上げた。 スッ 私は、するりとそれを避けた。 「へえ、避けるんだ。じゃあ、こっちも本気出すわ」 また、拳が振りあげられた。速い。 避けられ、ない、、、っ。 「やめろよ」 えっ?この声。 「女子に手上げるとか、最低だな」 大山、くん、、、? 川山くんは、足を上げた。蹴るつもりだ。 ゴッ とても大きい音がした。私が、川山くんの足を蹴ったのだ。 「いった、、、。なに、お前。強っ。この暴力女」 暴力女。私は、その場に崩れこんだ。 私は小学生のとき、暴力女と呼ばれていた。 誰もが私を恐れ、近寄らなかった。 でも、気付いた。このままじゃだめだって。 だから、私は中学校に入ると、全く暴力を振るわなかった。 その結果、みんなに好かれるようになった。彼氏もできた。 でも、暴力女、か。私のあの努力は、何だったの、、、。 「はるりが暴力女でも、俺はきっと好きになる」 大山くんが私の顔を覗き込んで言った。 川山くんが、呆れたように言った。 「なんだよ、それ。まー、もういいや。じゃあな」 スタスタと立ち去っていった。 「大山、くん。ありがと、助けてくれて」 「どういたしまして。でもさ、はるり」 「何?」 「そろそろ名前で呼んでよ」 私はドキリとした。名前、和樹、、、。 「和樹、くん。ありがと」 「可愛い」 その一言で、私も和樹も顔を赤くした。 「ちょっ、照れるからやめてよー!」 雲一つない、晴れた日の出来事だった。