恋なんて、そんなもん?
私には好きな人がいる。 訂正する。私には恋をしている人がいる。 はたから見れば、同じ意味。だけど、私にはぜんぜん違う。 そのまま言うと、好きかなんて判断できないから。恋は、私の言い表せないような気持ちを表すから。 そのまま言うと、そう言った私の心に傷をつけるから。 私には、その人にいつから恋をしているのかわからない。ある日突然、いい表せないくらいに恋をしていることに気づいた。その子は、私と正反対の子。いっつも何でも前へ出て、親分みたいな顔をして、みんなを引っ張る。私はといえば、成績こそいいものの、毎日普通に、誰も傷つけないくらいに生きている。その人と私の共通点といえば、ピアノが弾けることくらい。私はその人を好きになってから、その理由を求めるようになった。別に特別イケメンじゃない。勉強が私よりできるから?ピアノが私よりうまいから?尊敬してるって気持ちを、恋と間違えたのかな。でも、私は、その人を思うと胸の鼓動が絶えない。少しかたがぶつかっただけで、きゅんきゅんして、動けない。恋だよね。なんて、最初は認めたけど。日に日に、嫌になってきた。私が思うより、その人は無力すぎた。ああ、ほんとは中身のない人なんだって。一回、恋を諦めた。勝手に終わらせた、初恋だった。でも、私はいつの間にか、恋をすることが、生きがいになってしまっていたようだ。学校に行くのも辛い。だから、愛せる人を、見つけることにした。でも、無駄だった。私には、あの人しか恋できない。そういう体がオッケーサインを出しているような人に、私は人生で、初めてあった。 ある日のことだった。生活班で活動して、みんなが順番にしゃべっていって、40秒ほどの動画をとった。それを保存しようと思ったら、別のボタンを押して動画を消してしまった。ものすごくあせった。あせってあせったけど、動画は復活しなかった。みんなに謝ろうと思ったけど、うまく言えなくて、そのうちの一人にしか謝れなかった。その子はいいよいいよと言ったけど、そうだよね、嫌でも私だってそういうもん。ちょっとつらくなった。この場にいるのがだめなんじゃないかと、だめだめな自分を責めた。次は給食だったから、つくえを班でくっつけて食べる。それだけでもつらすぎて、早く帰りたかった。時間をもどせたらと、何度思っただろう。聞こえないくらいの長いため息まじりに、つくえを動かしていた。すると、だれかが私の足を、うわぐつごしに思いっきりふみつけた。 「いった…」 おもむろにそのだれかの方を向いた。すると__「その人」だった。その人は、何も言わず自分の支度を始めた。その瞬間、何かがおちた。私の心の中に。もうやめよう。今度こそは。いいの。もうね。私がメンタル弱すぎて、その時頭ごとおかしくなってるってことも知ってる。だけど、自信がある。私は今、正常な判断をした。さようなら。私の”好きな人”。