時の狭間で
あと一分… 私は壁時計を見つめた。刻々と過ぎる時間は、私の胸の鼓動を早くしていった。こんこん。優しくドアを叩く音がした。あわててドアを開けに行く。 「はーい」 「おまたせーちょっと遅かった?」 「いや、大丈夫。」 いやいや大丈夫ってなんだよ!そう思いながらそーっとかがみで顔を見る。あーやっぱり赤くなってる! 「ねえ、今日はね、クッキー焼いてきたんだけど、食べる?」 「うん!」 こーちゃんは、わけあって毎日20時30分きっかりに、私の家へ来る。そして彼はいつも、なにかを私にくれる。今日はクッキーだ。私はひそかに、こーちゃんに恋をしていた。9時までの30分間。私にとってのひみつの時間。学校で居場所がない私にも、こーちゃんは優しくしてくれる。 「じゃあ、そろそろ帰るね。また明日!」 ドアがバタンとしまった。さっき、わけあってと言ったが、実は、こーちゃんは、もうこの世にいない。クラスでたった一人こーちゃんが見える私の家に、こーちゃんは遊びに来る。こーちゃんによると、それ以外の時間はなつかしい場所をめぐっているらしい。こーちゃんは、あと1日で、成仏する。その瞬間こーちゃんに触れていたものは、道づれにされるらしい。そう。こーちゃんは、明日私の部屋で成仏を迎える。そう、思っていたのに… 次の日、こーちゃんは私の部屋に来なかった。私は家を飛び出した。ひどい雨に打たれたけど、気にならなかった。私は必死で、こーちゃんを探した。こんなに探したのに、見つからない。あきらめられなかった。最後に私は、こーちゃんとよく行った遊園地に行った。鍵はしまっていたけど、そんなのどうでも良くて乗り越えた。私は観覧車の前で歩みを止めた。こーちゃんがいた。私は思わず、かけよって抱きしめた。 「お、おい!どうしてこんなところまで…」 そうこーちゃんが言ったあと、私は顔をあげた。 「こんなところ?冗談じゃないわ!私がどれだけこーちゃんのこと思ってるか知らないくせに!」 そう言って私は、こーちゃんの体に顔をおしつけて泣いた。雨と混じって、もうどうでもよかった。でも、こーちゃんは私を離した。 「おい、お前まで死なせるわけにはいかないんだよ!生きて、生きてくれよ!」 「いやだ!私は…私はこーちゃんのいない世界なんて、生きている理由がないよ!一緒に行こう。雲の上へ。」 こーちゃんは黙っていた。そのあと、静かにうなずいた。私はさっきと違う意味で、涙をこぼした。そしてこーちゃんは、私のかたとこしに手を当て、引き寄せた。私は背のびをして、こーちゃんに口づけをした。まばゆい光が、わたしたちを包んだ。 もう大丈夫。もう何も、怖くない。このまま…行こう。その先へ。 ______________________________________________________ ちゅんちゅんです。読んでくださり、ありがとうございました。感想いただけたら嬉しいです。