好き、だった人
あたしには好きな奴がいた。 まぁ、この言葉を見れば分かるとおり、過去形だ。相手の男子は同い年で、前1回同じクラスになったことがあって、その時に惚れたのかな。自分でも、恋に落ちたキッカケがよくわかんないけど。 私が恋してる間、その子には好きな人がいなかった。1年くらい片思いしてたけど、痺れ切らして、私は諦めた。学生だったし、1人に執着し続けるのも子供みたいで嫌だったから。 彼とは元々仲が良かったから、好きじゃなくなった今でも交流はある。「友達」という名目の関係で。 そんなある日、友達から聞いてしまったんだ。彼に、好きな人がいるってことを。その相手の名前も知った。言われてみれば確かにって思うけど、どこかでそれを認めたくない自分がいた。 私はもうとっくに彼のことを諦めてたはずだけど、どうしてもその相手のことが気になってしまった。 「キミって、好きな人いるの?」 本当はこんなストレートに聞けたら良かったのかも。でも私には何故かそんな勇気が出なくて。遠回しに聞いた。 「まぁ」 この時点で私は驚いていた。正直、友達が嘘ついてるのかなと思ってる自分がいたから。 「相手ってどんな性格の子?」 「優しくて、尊敬できる人。 よく遊びに誘われてーー」 その言葉を聞いて、心のどこかにあった淡い期待は弾けて消えてった。私はキミを遊びに誘ったことなどなかったから。 当たり前だ。キミの好きな人が、あたしなわけない。分かってたはずなのに、バカなあたしは、少なからずそれを認めたくなかい気持ちがあったんだろう。 「脈アリじゃん、頑張ってね」 絞り出した言葉が、彼に違和感なく伝わったかな。あたしはその後用事があると言い、その場を抜け出した。ごめん。身勝手なのはわかってる。 私はキミを諦めたはずなのに、どうしてこんなに辛いのかな。わかんない。あたし、バカだから、わかんないよ。 後日。私は彼に謝った。直接謝る勇気はなくて、LINE越しだったけど。 「この間は突然抜け出してごめん。 キミの恋、応援してるから!」 震える手で打った文字は、何度も何度も文面を確認した。誤字が無いかとか、日本語がおかしくないかとか。 送った後も、焦れったくて何度も文を見直した。間違いは無かったけど、こんなので良かったのかなとか、色々不安になっちゃって。 落ち着かないから、でも、キミは割とすぐに返信をくれた。 「大丈夫、ありがとう。優しいね」 …優しいのはどっちよ。キミが優しすぎるから、私は勘違いしたんじゃない。 でもやっぱり、それでも私は彼が好きだ。彼に好きな人がいようと、その気持ちが変わらないなんて自分でも驚いた。こんなに好きにさせておいて、キミはなんて罪な人なのって思うよ。 私は心で彼に悪態をつきながらも、メッセージにハートマークを押した。 いつまでも迷惑なあたしだけど、これくらい…良いでしょ。