不完全なメッセージ
『高岡芽衣です。生まれつき、声が出ません』 この紙一枚を見せれば、みんなが騒ぐ。 そりゃ、そうだ。誰だって、自分のクラスの転校生が声が出ないなんて、わからないし、予想もしないだろう。 「自己紹介ありがとう。それじゃあ、あそこにある愛美さんの隣の席に座ってね。」 私はこくりと頷き、席に座る。 「さっそくだけど、次の時間は芽衣さんの質問タイムね」 そう先生は言うと、教室から出ていった。 さて、どう時間を潰そうか。声が出ないせいで、だれも話しかけにこないわけだし。 「ねえ」 だれかに話しかけられ、振り返る。 愛美ちゃん、という人だった。 「よかったら、友達になろう」 にっこりと笑う愛美ちゃんは、声が出る出ないなんて頭の隅にすらないように思えた。 前の学校では友達なんていやしなかったから、戸惑う。ああ、返事しなきゃ。 「返事、しなくていいよ」 なんて優しい子だろう。感謝で胸がいっぱいになって、首を縦にブンブン振る。 そして 『あ り が と う』 声は出ないけど、口の動きで伝える。 不完全な私のメッセージ。