卒業式のあと。卒業生が校庭に出払い、誰もいない教室に、一人。
私は、窓際の席から校庭に咲く桜を眺めていた。私の席じゃないけど、別にいいよね。
今日で私も卒業。3年間通ったこの中学校ともお別れだ。
本当は、私もみんなといたほうがいいんだろうけど、どうしても最後にここから桜を眺めていたかった。
ふと、校庭の隅に咲いている桜を見ていると、木の下にいる男女が目に留まる。男子生徒が緊張した顔で女子生徒に何かを伝えると、女子生徒は驚いた後、少し恥ずかしそうに頷く。少し前に、『卒業式のあと、あの桜の木の下で告白すると叶う』という噂が流行っていたせいか、さっきからそういう人たちが多い。
(青春だな……)
と思いつつ、視線を桜に戻す。
私の“好き”は、きっと叶わない。
綺麗に、でも、どこか寂しげに咲く桜。
「あ! いたいた。心乃葉ー!」
「あっ。さくら」
クラスメートの桜庭さくら。小学生の頃から仲が良い“親友”だ。
「探してたんだよ!」
「ごめんごめん! ここから見える桜が綺麗でさ」
「ほんとだー!」
そう言って、さくらは私の前の席に座り、さっきの私と同じように校庭の桜を眺める。
私は頬杖をついて、そんなさくらの横顔を見つめていた。いつもと変わらず可愛いけれど、少しの寂しさと満足さが混じったような、そんな顔をしていた。それすらも愛おしく感じる。
私はそんなさくらのことがずっと“好き”だ。
でも、これももう……
「ねぇ、心乃葉?」
さくらが振り返る。
「ん。どうしたの?」
「今まで、本当にありがとう!!」
そう、私とさくらは違う高校に進学する。今までは同じクラスで毎日のように会えていたけど、そんな日常ももう、終わりだ。
どうしようもないほどのない悲しさがこみ上げてくるが、それをぐっとこらえる。
「こっちこそ、今までありがとう!」
「あのね。わたし、心乃葉に会えて本当に良かったと思ってる!! 小学校からずっと、毎日楽しかったよ!」
「私も!」
「ずっとずーっと大好きだよ!!」
「っ!――」
きっと、さくらの“好き”と私の“好き”は違うって分かってる。でも、
「――……ありがとう」
そう、答えるしかなかった。
けれど、さくらは微笑んでくれた。
その優しさはとてもあたたかくて、痛かった。
「……あっ! 待ち合わせしてたんだ!」
「待ち合わせ?」
「う、うん……! その……校庭の隅の桜の木の下で……」
恥ずかしそうにさくらは言う。
「……分かった。いってらっしゃい!」
「! 心乃葉も校庭に来てね! みんなで写真撮るらしいから!」
「うん!」
手を振りながら教室を出たさくらに、私も手を振り返す。
「……あーあ」
私だって、さくらのことが、ずっとずっと大好きだ。
きっと、さくらと待ち合わせをしている人よりも。
でも、それを伝えてしまったら、この関係が壊れてしまうかもしれない。
さくらの好きなものも
さくらの好きなことも
さくらの初恋の人も
さくらの好きな人も
全部知っているのに、それは私ではないし、さくらの隣に居れるのも、私じゃない。
私達の関係が“親友”以上になることはない。
でも、それでも。
この気持ちだけは、他の誰にも譲れないから。
「ずっと、好きだよ。」
今までも、これからも。
誰にも伝えることのできない、この想いを。
きっと叶わない、この想いを。
抱えたまま生きていかないといけない、この想いを。
大好きな人すらも傷つけてしまうかもしれない、この想いを。
終わりを告げる春の空に、呟いた。
少しは、前に進めたかな。
春瀬 心乃葉(はるせ このは)
桜庭 さくら(さくらば さくら)
あとがき―――――――――――――――
読んでくださりありがとうございます!雨憂です。
タイトルが先に思いつき、そこからノリと勢いで書いたので、読みにくいとことか誤字脱字があると思います。ごめんなさいm(_ _)m
改めて、読んでくださりありがとうございます!感想お待ちしています!
※辛口NGでお願いします。