初恋は口に苦し。
おれは夢を見ているのか…? 中学二年の三学期のはじめ。 おれが見つめる先には、小学5年生のときに東京へ引っ越していったおれの初恋の人が立っている。 「大村 美波です。あと三ヶ月間しかこのクラスでは過ごせないけど、これからよろしくおねがいします!」 相変わらず、というかますます可愛くなって美波はこの町へ返ってきた。なんてことだ、これは運命かもしれない。ワクワクしながら中2の三学期は幕を開けた。 「なあ、高木、よかったやん。美波やで。お前好きやったやろ?つき合えるとええな。」 休み時間になったとたん親友の春樹がニヤニヤしながらおれの顔をのぞき込んできた。 「うるっさいなぁ。まだこっち来て話してもないのに付き合えるかよ。」 「何の話?」 ぎ、ぎゃ。み、美波!!! 「久しぶりだね。陽太くん、春樹くん。あたしのこと覚えてる?」 「あ、当たり前やろ!ずっと小学校同じクラスやったし。」 おれは思いっきり床をガン見してなんともいえぬカッコ悪い感じで美波に言葉を返した。 「うん、おれも忘れてないで!これからまたよろしくな!」 春樹は笑顔で美波のほうを見て堂々と話をしている。これだから陽キャは!! 「…そっか!仲良くしてね!!」 「お、おっけぃ……」 美波は笑顔で背を向けて他の友達の方へ行ってしまった。行ってしまった…けど!話しかけてもらえるなんて!!仲良くしてね…か。こんなに良い響きの言葉もあるもんなのか。 「え。美波帰ってきたんや。」 「おん。」 俺は早速塾で小学校で美波と仲が良かった彩乃に今日のことを話した。 「嬉しかったやろ。陽太。」 「え、なんで?」 「だって、美波のこと好きやったやん。」 まあそうだけど、なんで知ってるの!まあ恥ずかしいし聞かないでおこ…。 「かわいくなってた…。ロングになってた。」 「フーン、なんか陽太がかわいいとか言うの…キモ。」 あ、そうか。おれは春樹と違って顔の構造がよくないから女子のことをかわいいとか言ったらキモがられるんだった。 「…あ。じゃあさ、あたしと、陽太と春樹と美波で今度遊ぼ。」 おれがキモいと言われて落ち込んでいる間に彩乃がナイスな提案をしてくれた。 「おう!いいなそれ!!そうしよう!また美波に言っとくわ!」 「おっけ。また日とか決まったらあたしにも連絡して。」 「了解!じゃ、おれ帰るわ。」 「…うん。」 そしてなんだかんだ美波が忙しく、予定がついたのは3月の最初の日曜日だった。ついに4人で遊ぶ日!!おれは張り切りすぎてなんと40分前に集合場所に到着してしまった。 すると向こうからなにやら華やかな雰囲気を感じて振り返ると、そこには美波と彩乃がいた。 「おまたせー!」 うおーー!私服の破壊力!!!眼福…! そして春樹も合流した。 「じゃあ、行くか。」 それから4人でショッピングモールをうろうろした。アイスを食べた。春樹とおそろいで謎のキーホルダーを買った。彩乃にクレープをおごらされた。4人でプリクラを撮った。 あっという間に時間は過ぎ、もうお別れの時間が近づいていた。 「ひさしぶりにみんなと遊んでほんと楽しかった!」 美波は満面の笑みを浮かべていた。 「…おれも。」 小声でそう言い放ち、おれは今日美波に告白しようと決めた。 帰り道の電車。おれは美波と隣の席になった。 「…あのさ。美波。」 「どしたの?」 「おれ、お前のことが小学生のころから好きだったんだ。」 言えた。言ってしまった。 「ご、ごめんね…」 あ、振られた。そりゃそうか…。 「うん、な、なんとなくそんな気がしてた。今までどおり友達でいような。なんかごめん。中3でもまた仲良く…え?」 美波はなぜか泣き出した。 「ちが、私、4月には父さんの仕事の都合でアメリカに行くことになって…!」 「アメリカ?」 「だからまた会えなくなっちゃう…。あと、引っ越しの準備でこれからは学校も行けなくなる…」 信じたくない突然の知らせにおれは驚いた。 「こっち帰ってきてから仲良くしてくれてほんとにありがとね。すごく嬉しかったよ!」 「お、おれも!アメリカでも元気でな!!」 そのまま駅につき、美波は帰って行った。電車で後ろの席だった春樹と彩乃にも会話が丸聞こえだったらしい。春樹はかまずそうな顔で「おう、ばいばい。」と苦笑いで帰って行った。 彩乃はなぜか半泣きだった。すると、おれの手を握ってきた。 「ばか。なんであそこで告白するの。あたしも春樹も、気まずいでしょ。」 「う、ごめん。」 「それに…!あぁ、もう!!やっぱ嫌い!陽太なんて!!」 「えぇ、なんで!?」 美波に振られ、彩乃にはなんかよくわからないけど、嫌われた。春樹には苦笑いされた。なんて日なんだ。 まあせいぜい、あと一年の中学校生活を楽しもう。そしていつか、アメリカでセレブにでもなろうかな。