短編小説みんなの答え:0

「俺は、小さい頃からお前に一途なんだよ。」

放課後の廊下はしんと静まり返っていた。大多数の生徒はみんな部活に行ったり既に下校している為だ。例外として挙げるのならば、生徒会活動がある生徒や忘れ物をした生徒などしかいないだろう。実際、私は後者に当てはまる。教室に忘れた物を持って、帰ろうと私は廊下を歩いていた。 「私、葵くんが好きなの!」 私が階段の横を通ろうとした時、女子生徒のそんな声が階段の踊り場から聞こえた。折り返しの階段の壁のせいで、姿は見えなかった。自然と私は歩みを止めていた。 「葵」と呼ばれたその人は、恐らく私の幼馴染のことだ。彼とは幼稚園に通っていたとき同じクラスになってから今に至るまで、一度もクラスが離れたことがない。その為、軽口を叩き合うくらいには友好な関係である。 彼は誰にでも分け隔てなく接する人であるので女子に人気はありそうと思っていたが、やはりモテるのだなと再認識した。 話のネタ(主に葵への冷やかし)にでもしてやろうと思い、私は足音を立てないよう階段の下に隠れ、息を潜めて会話に耳を傾けた。 「だからお願い。付き合ってくれませんか」 「あー…ごめん、俺好きなやつ居るんだ。だから付き合えない。でも、気持ちはとっても嬉しい!ありがとな。」 「…へぇ。葵、好きな子いるんだ。」 無意識のうちに私はそう言葉を小さく発していた。なんだか胸をちくちく刺されるような感覚がして痛い。一体なんなのだろうか。私は、葵のことが好きな訳ではないのに。 「、わかった。ごめんね。放課後に呼び出しちゃって。またね」 告白した女子生徒はそう言って足早に去って行った。だが、葵がまだいるため私は階段下から動けないままだった。どうしようと考えていると、葵が話しかけてきた。 「おーい玲奈、そこに隠れてんのは分かってるぞー!盗み聞きしやがって」 「気づいてたの?ごめんごめん、気になってつい。」 「たく…お前、この後予定ある?一緒に帰ろうぜ」 「いいよ。じゃあ早く帰ろう」 「おう!」 その後葵とは一緒に帰ったが、胸がずっとちくちくと痛かったせいかあまり記憶はない。それどころか、あの告白現場を目撃してから授業や勉強などに全然集中できなくなってしまった。 そのことを仲の良い友達に相談すると、こう返答が帰ってきた。 「そんなの決まってるじゃん、恋でしょ。」 まさか、と思った。だって私は葵のことなど友達と思ってはいるが恋愛対象とは認識していないから。だが、友達に相談してから、葵のことを妙に意識するようになってしまった。これじゃあ、私が葵のことを好きみたいじゃないか。 そう、私はもだもだと自分の恋心に嘘をつき続けるのだった。彼が好きな人が誰なのかなど、知る由もなく。

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