とあるモンスター飼育員の話
ー毎日手を焼かされますねぇ、奴らには… それが、話を聞いた彼の一言目だった。 私はフリーライターという仕事をしている。 今日は、珍しい『モンスター』を育てている飼育員に取材に行く予定がある。 飼育員の本業は小学校の教師。どうやら彼は、働いている小学校でそのモンスターを育てているらしい。 今回、そろそろモンスターたちが大きくなってきたとのことで私のところに依頼をしてきた、とのことだ。 待ち合わせ場所は彼が働いている小学校。住宅に囲まれた、温かみのある学校だった。 古びた校門をくぐると、待ち合わせていた人物が姿を現した。 未知のモンスターを飼っていると聞いていた私は、てっきり強大な生物も飼いならす程の屈強な方を創造していたのだが、三十代半ばとみられる細身の男性がやってきたときは驚いた。 他の先生かと思い、一瞬素通りしてしまった程。ますますモンスターへの興味が大きくなった。 暖色系にまとめられたなんともおしゃれな応接室に通され、黒革のソファに向き合って座る。 パソコンを起動し、メモの準備を整えると、彼は話し始めた。 「毎日手を焼かされますねぇ、奴らには。」 しみじみと思い出を語るようにそう話す彼の顔は、嬉しいと寂しいとが混ざったような、まるで学校を巣立っていく卒業生が思い出を語るようなそれだった。 「どんな風に大変なんですか?飼育は。」 「精神的に疲れますね…」 私がモンスターと出会ったのは、六年と少し前のことです。 初めて会ったモンスターたちは、とてもかわいらしく見えました。 私から見れば、まだ生まれたばかりのいわばヒヨッコでした。 しかし、しばらく一緒に過ごしているとだんだん本性が見えてきたのです。 紙はびりびりに破れて部屋の隅で見つかり、時にはゴミ箱に捨てられ。後者のほうが律儀といえばそうなのですが。 食費も大変なものです。学校関係者の方々に会費のように集めているので心配ありませんが、がつがつと食事してボロボロとこぼす様を見ているとやはりモンスターなのだと思い知らされます。 時には悶えるほど愛しい時もあるのです。にっこり笑っている時なんかそうですね。 …まあ、ほとんど鬼の角を生やしっぱなしですけどね(笑)。 そのうち大きくなってきて、それからが大変でした。 三年ほど経った頃ですね、いつの間にか大きくなってきて、賢くなってきてました。 そうなるともう大変ですよ!最初よりもずっと大変。 何というか、ずる賢く、そう!巧妙な手口で私を困らせてくるんです。 …かまってほしいんですかね! 隠し事なんてしょっちゅうですね、もう。 それからまた三年ほど経って、六年目になりました。 巣立つときがやってきたわけです。 怒り:かわいいがそれまで7:3くらいだったのが一気に1:9くらいになりまして。 最後に「まったね~!」なんて言って去っていくもんですから、もう大号泣して見送りましたよ。 あの時の奴らの表情は今でも忘れませんよ。 彼は全てを語り終えると、少し瞳を潤ませていた。 教師の生徒愛を感じた一日だった。