知らない魔法
小学校6年生で書かされた、将来の夢。 3月といってもまだあの時は、雪が降っていた。 冷たい手に、短い鉛筆を握って。 あの時、原稿用紙に何を書いたかなんて、もう思い出せない。 「何、この点数」 チリチリと雪が降り積もる中、薄暗い部屋に、大きなため息がつく。 机の上には、一枚の模試結果用紙。 「お姉ちゃんは、いつも100点だったよ?」 低い、お母さんの声。カリカリと爪を噛む音。 「ごめんなさい。次は、、できるように」 「なんかさあ、70点とかありえないよね」 こういうのも、全部無駄なの?、と、お母さんは通帳と、塾テキストをパラパラめくる。 高校3年生。 私は中学受験に失敗し、中1から毎日過酷な塾に通い、睡眠なんて、取る暇もなく。 「なんであなたはできないの?、考えてみよっか」 「次は、できるように、、」 「、、、」 お母さんは、もういいや、とでもいうように席を立つ。 お母さん、、いや、この人は、なんでも「完璧」にこだわる。 お姉ちゃんは勉強も、運動も、なんでも完璧だった。 だから私は、この瞬間見放されたんだとわかった。 (なんでだろう) なんで私って、こんなに頑張っているの? 理由は?意味はあるの? 秒針は、音を立てて、時間が溶けていく。 ⭐︎ー チクタク、、 (私、、もう) 模試の結果。過酷の日々。 何か、何か魔法で変わってしまいらい。それができなければ、消えてしまいたい。 (ああ、なんて、、見窄らしい、、__) その時。 「ナラサ」 ふわりと金木犀の香りがする。 「ニゲチャエバイイジャン」 「妖精、、さん?」 美しい顔だった。 月の生まれ変わりだと思った。 「キミハ_」 妖精がふわりと飛ぶ。 (綺麗、、) 「夢ハナイノ?」 そう聞かれた途端。 私の前に絵の具が飛び散る。 幼い頃から大好きだった。 そう。、、本当。本当は 「絵、、上手くなりたい」 「ン?」 「私、、、美術の大学に、、行きたい、、」 本当の、本心。そして、私の本当の理想。 「ソッカ、、」 その時。 たったの一瞬。 すごい。 すごく綺麗な物が見えた。 何か、とても綺麗な。 「え、、」 私はありえない目の前の光景に、息を詰まらせる。 「馬車ノジカンヨ、、、シンデレラ」 美しく、甘い声と共に、 音楽が鳴る。 え、、 「何これ、、」 次第に笑いが込み上げてきた。 何、この気持ち。 これはそう。 私の知らないシンデレラ。 私の知らない魔法。