あの花が咲くころには(奇病)
私は佐本音々花(さもとねねか)普通の高校2年生だった。なんで過去形なのって?だって今は普通じゃないから。私は花咲病にかかってしまい、あと1年しか命がない。だから今は、病院で入院してる。そうそう、私の同じ部屋の患者さんがいるの。榊原葵葉(さかきばらあおは)っていう中学3年の女の子。その子は宝石病なんだ。どっちも余命があと1年だから、どっちが生き残れるか勝負してるの。 「ねぇ、もうすぐ冬だよ」葵葉ちゃんがそういってきた。「うん、それがどうしたの?」私は意味が分からず、頭の中にはてなマークを並べていた。「なんで、きょとんとした顔してんの!」「なんでって、意味が…」「もう!音々花ちゃんのバカ!」そういって葵葉ちゃんは、ほっぺをぷく~と膨らませた。その姿はなんとも愛らしい。葵葉ちゃんは物知りで、おしゃべりさん。だから、葵葉ちゃんと話すのは飽きないけど、たまに難しい。「あ。そだ」葵葉ちゃんは怒るのをやめ、何かをとりだした。「それ、スケッチブック?」「うん」葵葉ちゃんが小さく返事した。葵葉ちゃんが取り出したのは、かなり使い込んだスケッチブックだった。そのスケッチブックを見ている葵葉ちゃんは、いつもの明るさはなく、寂しそうな、今にも泣きだしそうな、そんな顔をしていた。 ビービーと鳴り響く警報音で私は目を覚ました。うるさくて、怖くて、葵葉ちゃんのところに行こうと隣を見るとそこに葵葉ちゃんの姿はなかった。「葵葉ちゃん!どこ!」怖い、怖いよ…独りぼっちってこんなに怖かったっけ?だれか…「音々花ちゃん!」後ろから声をかけられ、私は振り返った。そこにいたのは葵葉ちゃんじゃなくて、看護師さんだった「あ、あの…葵葉ちゃんは…」私は葵葉ちゃんがどうなったのか気になり、看護師さんに聞いてみた。すると看護師さんは一瞬寂しそうな顔をいた。でも、すぐ笑顔になり「大丈夫。ちょっと、先生に診てもらってるの。すぐ帰ってくるから」と答えた。看護師さんはこう言ってるけど、私は正直怖かった葵葉ちゃんがもう二度と帰ってこないんじゃないかって。 次の日、葵葉ちゃんは集中治療室にいた。本当はダメだけど、特別にいれてもらった「葵葉ちゃん…」私が名前を呼ぶと、宝石で覆われ、見えなくなった目を合わせ、音々花ちゃんと名前を呼んでくれた。「葵葉ちゃん!私、まだ葵葉ちゃんと遊びたいよ!いっぱいお話したいよ!私、私…」涙で言葉が続かない、そんなとき葵葉ちゃんがねぇ、と口を開けた。「どうしたの」私は聞き返した。「私たち、似てるね」葵葉ちゃんがそっと口にした次の瞬間、ピーと心臓が止まったことを告げた。「葵葉ちゃん…」どうしてなの?どうして、私より先に死んじゃったの?絶対に勝つって言ってたじゃん…『私たち、似てるね』葵葉ちゃんと私、病気の進行具合はほぼ一緒だった。なのに…どうして…私はその場でずっと泣き崩れたまま立ち上がれなかった 私は真夜中に目が覚めた。ふと、隣をみる。でも、そこに葵葉ちゃんはいない。ベットが一つぽつりと置いてあった。その上にそっと置いてあるスケッチブック。私はそれをゆっくり開けた。そこにはたくさんの思い出の絵が描いてある。その中に、私を描いた絵があった。その私はさっきの葵葉ちゃんのような、花で目を覆われた、私がいた。そっか…葵葉ちゃんが似てるねって言った理由はこれなんだ…。葵葉ちゃん私、きっとあと一本、もう片方の目に花が咲いたら…きっと同じところにいるよ。それまで待っててね。新月で、いつもは見にくい星も今日はよく輝いている。まるで葵葉ちゃんの宝石のように