短編小説みんなの答え:0

夏の日の夜

祭もとうとう終盤に差し掛かり、人々は次々と神社の石段に集まってきていた。 「私たちもそろそろ行く?」 りんご飴を頬張りながら、由奈がそう声を掛けてくる。それに頷くと、「わかった」の声と共に私は腕を引かれながら彼女の後ろを着いていった。そして人の少ないところを探し、彼女の横に腰を下ろす。 「楽しみだね、花火」 そう。この祭の最後には、打ち上げ花火がある。そのころには屋台も畳まれるため、皆がそれを見るために石段に集まるのだ。 「うん。楽しみ」 そう答える私は、由奈の方を見ることができなかった。嘘だからだ。今の私には、楽しみだなんて到底思えない。この祭が終わってしまえば、私は彼女と会えなくなってしまうのだから。嫌だった。祭が終わって、静けさと共に別れが訪れる。それがどんなに寂しくて、どんなに辛いか。私にはきっと耐えられない。それならいっそ、時間が止まってしまえばいい。そうとさえ思えた。 しかしそんな思考は、由奈の発した言葉によって遮られる。 「元気ないじゃん。どうしたの?」 思わず緊張が走る。どうにか言い訳のできないものか。すこしの逡巡の後、私は口を開いた。 「実は、お腹が痛くなってきちゃって!」 少しの笑いと共にそう嘘の弁明するが、由奈の目は真剣だった。 「嘘。私にはわかるよ。絶対嘘吐いてる」 それから彼女は「本当のことを言って」と詰めてくる。私はなんとか躱そうとしたが、やはり幼馴染の力は凄いようで。 「由奈と会えなくなるの、寂しいんだ」 結局、言ってしまった。呆れられるだろうか。そう思って地面に視線を落とす。しかし次の瞬間、私は暖かさに包まれていた。由奈に抱きしめられたのだ。 「私だって寂しいよ。音羽は私の親友だもん」 気付いた時には、涙が溢れていた。それは由奈も同じだったようで、彼女の口から嗚咽が漏れる。 そんな二人を、花火の音が包み込んだ。私は生涯、この夏の日の夜を忘れることはないだろう。

みんなの答え

辛口の答え

※きびしいコメントを見たくない人は
「見ない」をおすと表示されなくなるよ!

この相談への回答は、まだありません。

他の相談も見る

ランキングページへ

相談に答える

相談の答えを書くときのルール

【「相談する」「相談に答える(回答する)」ときのルール】をかならず読んでから、ルールを守って投稿してください。
ニックネーム必須

※3〜20文字で入力してね

※フルネーム(名字・名前の両方)が書かれた投稿は紹介できません


せいべつ必須

ねんれい必須
さい

※投稿できるのは5〜19さいです


都道府県必須

アイコン必須

答えのタイトル必須

※30文字以内


じこしょうかい

※140文字以内

※自分の本当の名前、住所などの個人情報(こじんじょうほう)は書かないでね


ないよう必須

※500文字以内


辛口

※ないようがきびしいコメントの場合はチェックをつけてね!


ひみつのあいことばを設定してね

他の人にわからないように、自分しか知らないしつもんと答えを入力してね。

※ひみつのあいことばは忘れないようにしてください

※自分が選んだしつもんや答えが他の人に見えることはありません

ひみつのあいことば①必須

※使える文字: ひらがな・カタカナ・半角英数字

※半角カタカナ、全角英数字が使えないよ

※2〜20文字で入力してね

ひみつのあいことば②必須

※使える文字: ひらがな・カタカナ・半角英数字

※半角カタカナ、全角英数字が使えないよ

※2〜20文字で入力してね