トクベツフツウ
わたしは何もかも普通。特技・趣味なんてなにもない。 勉強だっていつも平均近く。運動だって並にできるだけ。 「トクベツな人ってさ、大変そうだよね」 「フツウが一番!」 世間ではみんなそう言ってるけど、わたしはそうは思わない。 (…つまんない。) キーンコーンカーンコーン チャイムが鳴った。昼休みが始まる合図だ。教室ではみんながワイワイ喋っている。 わたしは、いつもの場所へ向かった。 __校舎裏の、花壇。 ここが唯一のわたしの安らぎの場所だった。いつも、ここでお昼を食べるのだ。 だけど、今日はいつもと違った。 「あれ、なんか人がいる!?」 明るい声が響いた。いつも、ここはわたし一人しか来ないのに。 「えー!!わたしだけのいい場所だと思ったのに…」 「…まあ、いいや!君、名前なんていうの?」 目の前にいる人物は、表情がコロコロ変わる。 水色のポニーテールに、横髪にはヘアピン。ぱっちりした黄色い目。わたしと同じセーラー服の制服。 (…間違いない!) わたしが、ずっと憧れてた…松山美空(まつやまみく)、さん。 絵がとっても上手で、成績優秀。でも、なぜかいっつも一人ぼっちだった。 そんな、すっごくトクベツな存在。 「わ、わたしの名前は…鈴木紬(すずきつむぎ)です」 どこにでもいるような、自分の名前が嫌いだった。 「ふーん、つむぎちゃんかぁ。隣のクラスだよね!」 え。 (認知されてた!?) 「は、はい…」 「そうだ、今日からわたしとここでお昼食べない?」 (ふぁ?) 突然の美空さんの発言に、わたしは戸惑ってしまう。 だけど、本当にその日から、美空さんは毎日ここに来るようになった。 __ある日、美空さんがこういった。 「わたしね、ずっと一人ぼっちだったんだ」 「え…」 正直言うとずっと前からそんな事は知っていた。でも、なぜ今急にそれを言われたのかが分からなかった。 「あのね、わたし、なんでも人の意見を否定しちゃう人だったの」 「…ここの中学校はわたしと同じ小学校の人が多かったから、ずっとみんなから嫌われて」 美空さんが、初めて、悩みを相談してくれた。 「…あの、わたしも…」 「全部、なにもかもフツウの自分がいやで…」 初めて、人にこの悩みを相談した。 「…何言ってるの。つむぎちゃんは、とっても面白くて、こんなわたしを受け入れてくれて…」 「わたしの中では、ずっと、つむぎちゃんはトクベツな人だよ!!」 美空さんはそう言って笑った。 わたしは泣きそうだった。 「…美空さんだって、今は、みんなから嫌われてるんじゃないですよ」 「だって、わたしは、美空さんのことが大好きですから!!」 わたしたちは、二人共笑い合って、泣いた。