いかないで、列車
わたし、貝塚綾子(かいづかあやこ)。中学2年生。 自分で言うのもなんだけど、元気で明るくて、クラスの人気者。 そんなわたしには、友達として、大好きな人がいる。名前は、小野寺恵子(おのでらけいこ)。 彼女は、おさげでのみつあみふたつぐくり、決して暗くはないけど、あまりしゃべらない。 いわゆる、陰キャってやつだ。 でも、わたしたちは、幼馴染でも、親同士が仲良しというわけでもない。 ましてや、入学式で出会ったわけでもない。 ====================================================== 中学1年生の秋だった。 「今日は、転校生がきまーす。はいどぞー」 わたしの席は一番前の、ど真ん中。 後ろからは、どんな子かな、かわいいかな、と、コソコソ話だけど、騒がしい空気で包まれた。 しかし。ガラガラ…、と、扉が開くと、その空気はどこかへ逃げてしまった。 なんか地味じゃね?とか、思ってたんとちがーうとか、そんな言葉が教室中に飛び回った。 でも、彼女は、そんなこと気にせずに、自己紹介を始める。 「こんにちは!小野寺恵子と申します。また転校するかもしれないけど、そのときまではよろしくお願いします。」 彼女の声は、思ったよりも透き通った、美しい声だった。 キーンコーンカーンコーン 「はぁっ!疲れた~」 まあ、疲れたというよりも、小野寺恵子のことが気になって仕方ないのだが。 次の日。この日が、私の人生を変えたといっても過言ではないかも知れない。 今日も、いつもの世に帰りの支度をしていた。 また明日ー!と、友達と別れを告げ、帰ろうとしていたその時、ふと気になったことがあった。 それは、小野寺さんが学校の裏へ入っていったことだった。 学校の裏へ行くのは、1本の細い道を通ってしか行けない。そして、その道を知っているのは私だけだろうと思っていたのだが。 にしても、昨日転校してきたというのに、よく見つけたなぁ。なんだか悔しい。 何をするのか気になって、後を追った。 ガサガサ…。しげみをかき分け、学校の裏に入った。 以前と変わった…?ここ最近来ていないので、当たり前かもしれないけど。でも…なんというか…新しくなったっていうか…。 その時だった。 「…っ!」目の前には、魔法のようなものを使って岩を運び、古くなった池を改築している小野寺さんがいた。 「あの、、、きれいな池になったね」 わたしは、なにか見てはいけないものを見てしまったような気がした。 「え、あっ、…。見た?」 「うん…。」 「みられちゃったら、しょうがないね。」 彼女は、いろんなことを話してくれた。 このことを知っているのは、パパとママだけなんだと。 使える魔法…いや、魔術は、位置特定やものを浮かせてえ運ぶことができるんだと。 魔術がばれないように、定期的に転校しているんだと。 「なぁんか、全然ついていけないや。」 わたしは、口をぽかんと開けながら話しを聞いていた。 「このことは、内緒だよ、貝塚さん」 「うん。あと、綾子でいいよ。恵子ちゃん。また明日!」 ====================================================== それから、恵子ちゃんには、たくさん助けてえもらった。 ショッピングモールで迷子になったときとか、川に落ちてしまった帽子をとってもらったりとか。 そして、放課後には学校の裏でティータイム。お菓子を持ってきたりして、仲よくしていた。 出会ってから、約半年と一か月。悲劇は、起こった。 「えー、今日、小野寺さんが転校することになりました。」 え、え、え…ちょまって、え?転校? 【魔術がばれないように、定期的に転校しているんだ】 そうだ。魔術が使えるのがばれたら、すごく大変なことになってしまうから。しょうがないんだよね。 「ヒック、ヒック。」 あれ、なんで泣いてるんだ、はは。悲しくなんか、、、悲しくなんか、、、 キーンコーンカーンコーン 「あ、綾子ちゃん!またね、また会えたら遊ぼうね。バイバイ。」 ずいぶん、あっさりとした言葉だったが、恵子も涙目になっていた。 そう言って、恵子は両親が先に乗っていた列車に乗り、バイバイ、と手を振った。 「バーイバーイ!またっ、会おうねー!」 大粒の涙が光を放ちながら、列車風で宙に浮いた。