父は、サンドイッチを作ってくれる人だった。
母のいない休日に、父はサンドイッチを作ってくれる人だった。 そして、コーヒーにはちみつをいれて「甘いコーヒーだよ」なんて言いながら僕に差し出してくれた。 来る日も来る日も僕のそばにいてくれた。 どんな時だって遊んでくれた。 でもある日、起きたら母がいた。父がいない。 僕は、母に聞いた。「お父さんはどこに行ったの」 母は、少し間をあけて「ごめんね」といった。 どうしたのと聞いても、やはり「ごめんね」としか言ってくれない。 2日後、父がいた。僕が、どこ行ってたのと聞く前に、 「サンドイッチはおいしかったか」と聞かれ、「うん!とってもおいしかったよ!」と答えた。 その後、父は「ありがとう」と言っていなくなってしまった。 僕は言った。だれもいないところに。「お父さん、どこ行くの」 怖くて、不安で、いやだ。 僕は泣いた。「お父さん、行かないでよ。いやだ。いやだ。」 それを見た母は僕をそっと抱きしめた。やっぱり「ごめんね」と言って。 3日後、お父さんの仏壇がおかれた。 僕は、その仏壇に向かって「だいすき。」といった。大粒の涙をこぼして。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 母 愛子が言った。「あの子大丈夫かしら。お医者様が『ピーターパン症候群』とかなんとかいう病気らしいわ。ねえお父さん。」 父 啓太が言った。「いくら何でも仏壇なんて、不謹慎だろ。」 「しょうがないわ。あの子が作れ作れうるさかったのよ。」 愛子と啓太の息子、愛太は34歳。ピーターパン症候群患者だ。それは治らず、今でも子供のころの夢を見続けている。