短編小説みんなの答え:2

悪魔と人間の恋の行方は。

『インベル町』緑に囲まれていて、地図には乗っていない。 そんな小さな町には、昔から伝わる伝説があった。 それは、赤い月の日、深夜に外を出ると『悪魔』に会い、二度と帰れなくなるという伝説だった。 その悪魔は恐ろしい姿をしており、人間を食ってしまうと。 百年に一度、その機会はやってくる。 「冴ちゃん、今日は外に出ては駄目だからね。」 そして、今日がその日だ。 『悪魔』に会えるかもしれない日。 おばあちゃんに言われた言いつけを破り、家族全員が寝付いた頃に家を抜け出す。 冷たい風が頬を伝った。 空を見上げると、くっきりと月が見える。 私は行く先も決めず、ダラダラを歩いた。 森の奥の方へと来た時、ガサッと物音がした。 ビクッと、体が反応する。 「人間か」 驚くほど低くい声が耳に届く。 直感した。悪魔だ。 背が高く、斧を持っており、黒いフードを被っている。 「貴方が、悪魔?」 何故か私の心には、恐怖心なんて一つもなかった。 「貴様、俺が恐ろしくないのか」 「怖くなんて無いわ。話した事も無いのに、どうして怖いって分かるのよ?」 ただ疑問に思い、そう問いかけると、悪魔が距離を詰めてきた。 「貴様、齢は?」 「14よ。貴方は?」 「悪魔に齢などあるものか。一々覚えていない」 「へえ、何千年も生きているの?」 「ああ。だが、貴様の様な者は初めてだ。」 悪魔が私に手を差しだした。 「着いてきてくれないか。」 「私を食べるの?」 「いいや、食わない。約束しよう」 私は悪魔の手を取った。冷たかった。 悪魔が私を案内したのは、大きな洞窟だった。 しばらく歩くと、湖くらい水が溜まった場所が見える。 この頃、インベル町では水不足が問題になっている。 「こんな所、どうして見つけたの」 驚きを隠せずそういう。 「なあに、少し水を溜めただけさ。他の奴にも教えてやるといい」 「優しいのね。ねえ、悪魔さん、屈んでちょうだい。」 私の言葉に、悪魔は少し間を置き、屈んだ。 私は悪魔のフードを脱がす。 悪魔は、抵抗一つしなかった。 悪魔の素顔が露わになる。 洞窟の外から入ってきた光が、丁度悪魔の顏を照らした。 顏が無かった。真っ黒だった。闇だ。 「どうして顏を隠すの」 「悪魔だからさ。」 「貴方、お名前は?」 「そんなのあるものか。」 「じゃあ私がつけてあげる。アクアよ。」 瞳の色が、アクア色なんだもの。 「何故だ。俺は悪魔だ。貴様は人間だ!俺をすぐに捉えたいはずだろう⁉」 「貴方は悪魔じゃないわ!それに、人間も悪魔も関係ない」 アクアが目を見開く。 そして、大粒の涙が零れた。 「貴方は誰よりも優しいもの。ねえ、一緒に暮らしましょう?」 「駄目だ、俺には顏が無いんだぞ。お前を幸せにはしてやれない。それに、貴様に正体がばれた。俺は消えるだろう。」 「どうして!正体がばれると、消えちゃうの?」 「ああ」 「じゃあどうして私に正体をばらしたのよ!」 涙が零れた。もう、会えないの?アクアと。 「貴様は、殺せない。初めてなんだ。俺の姿を見て、逃げなかった人間は。なあ、俺達、前に何処かであった事があるか。  貴様の顏は、何処か見覚えがあるんだ。」 「無いわ。今日が初めてよ。」 「………そうか。貴様、名は?」 「冴子。冴子よ」 アクアは、私の頬に手をやった。 「冴子か。良い名を持ったな」 アクアの体が消えてゆく。 「まって、アクア。まって!」 「大丈夫だ、また会えるよ」 アクアは、塵となり、消えた。 でも、何故だか分からないけれど、また会える気がした。 _______ 悪魔は、死ぬ前に大きな思い残しがあった人間がなる。 記憶はなくなるが、体が覚えていると、無意識に思い残しのある場所へ向かうという。 この作品の『インデル町』は、四千年前、戦争で二人の美しい美男美女が町民の犠牲となり、来世で会う 約束を果たし、手を繋ぎ殺されたという、迷信が残っている_____。 美男の方の瞳は透き通って見えるほど綺麗なアクア色で、敵までも魅了されたらしい。 だが美男は顏に大きな火傷を負っており、差別を受ける。 それを救ったのは、『冴子』という名の美女だったそうだ。

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