家出
「てめえ、何してくれんだよ」 「このくそったれが」 ビシッバシッ 妹が親にたたかれる音がする。助けたい。でも、私には無理だ。 しばらくして、妹が私の部屋にやってきた。 「……おねえちゃん」 顏にはあざがたくさんでき、体は傷だらけ。その姿は、まだ1年生の妹にふさわしいものとは言えなかった。 私の家は、父子家庭。母は妹が幼いころに家を出て行ってしまった。父は夜中に居酒屋で働きに行き、朝に帰ってくる。私たちが学校から帰ってくる時にはとても不機嫌になる。 ろくにご飯を食べさせてももらえないし、暴力をふるわれることも毎日のことだ。 本当はこんなの我慢しないといけないんだと思う。でも、私はこの家にいるのが嫌になっていた。 苦しい。 苦しい。 そんな時に思い付いたのだ、家出をしよう。と。 引き出しの奥をあさってお財布を取り出す。中を見てみると1万円入っていた。 ……足りるかな 母が生きていた時にもらった、わずかなお小遣い。もしもの時に、ずっと残しておいた。 「行こう」 それだけポケットに入れて、私は妹の手を引いて外に出た。 外は真っ暗。父はもう居酒屋に行った。 「おねえちゃん、いいの?」 妹の声がする。 「うん、いいんだよ」 私は妹のことを抱き上げた。 平均体重をはるかに下回る妹はとても軽い。 可哀想に…… コンビニでおにぎりを二つ買って、妹と食べる。 普段あまり食べられていない私と妹には、とてもおいしく感じられた。 「……みずき、あおい…?」 ふと誰かに声を掛けられ、私はびくっとした。 みずきというのは私の名前、あおいというのは妹の名前なのだ。 「だれ、ですか…?」 振り返ると、そこには女の人がいた。 「やっぱり、みずきなのね」 「…!?」 「ごめんなさい、勝手に家を出て。これから一緒に暮らしましょう」 お母さん…? 私の…。なんでここにいるの。 私の目から涙が零れ落ちる。 何も知らない妹が不思議そうに私を見上げる。 「ごめんね。ごめんね。辛い思いしていたんだよね。お母さん、悪かったと思ってる。またもう一度一緒に暮らしましょう」 お母さんの言葉に私の昔の思い出がよみがえった。 「また、迎えに行くからね」そんな言葉を残して家を出て行ったお母さん。あの言葉、本当だったんだ。 「みずき?」 「うん、一緒に暮らすから」 私の応えに、お母さんは微笑んだ。 「そう言ってくれると思ったわ」 また零れ落ちた私の涙を月の光が明るく照らした。 初投稿です。アドバイスなどお願いします。