人形屋
妖怪や人外が住まうこの町の商店街。私は一つの店の前で立ち止まった。 『人形屋 待針』 不思議な名前だ。だけど何か引き付けるものがある名前だ。 「いらっしゃい。お客さん」 声をかけられたので声の主の方を見ると、目がボタンの人がいた。 「ひっ」 思わず小さな悲鳴が出て、数歩後ずさる。 「ちょいちょい、この目はからーこんたくと?だから大丈夫だよ」 何だよかったと胸をなでおろし、店内を見る。小さな人形から大きな人形まで様々なのものが置いてあった。 「どれもこれも、私が作ったんだ。上部で壊れにくいよ。」 説明を聞きながら見渡していると、一つの人形に目が留まった。 針を持った人形が小さな人形を作ろうとしている人形。さらに顔が困っていて、可愛らしい。まるでこの子が私を選んだようだ。 買おうと思って財布を見る。ちょうどあった。人形を手に持ち、カウンターに向かう。 「毎度あり。いいのに目を付けたね」 晴れやかな気分で店を出ようとしたときに、甲高いブレーキ音が聞こえて振り向くとトラックが突っ込んできた。 「危ない!」 その声と同時に、何かに引っ張られた気がした。服ではなく体の中から。 グシャ! そんな音とともにトラックが店に突っ込んでいるのが見えた。 「え・・・?」 さっきまであの中には店主がいたはずだ。周りを見渡してもいないということは中にいるのだろう。さっきまでの晴れやかな気分と違って、どんどん不安が積もって行く。しかし、余計な心配だったようだ、中から平然と店主が姿を現した。 「アーマジかー」 恐らく、怪我はしてないだろう。どこも折れていないどころかかすり傷一つない。 「おや、さっきのお客さんじゃないか、だいじょうぶかい?」 「うん、大丈夫です。」 そういって立ち上がる。その様子を見て安心したのか、小さくじゃあねと言って去っていった。 その時私は見た。彼女の後ろが裂けて白い綿が見えていることに。 数年後 久しぶりにあの人形屋がある道を通ったが、何もなかった。 あの時買った人形が解れてきたので、直してもらおうと思ったのだ。 「やっぱりか」 そうつぶやいた私の後ろから 「お久しぶりですね、お客さん。本日はどうなさいましたか?」 聞き覚えのある、人形屋の声がした気がした。 人形屋 待針 いつの間にかある人形屋。 そこにいるのは不思議な店主と 持ち主を選ぶ、人形たち