短編小説みんなの答え:1

あの子のこと(一応悲しい話です。苦手な人は見ないでね)

 「あの子のことなんだけど,どうしましょう」 「あの子のことなんだけど,やっぱり…」   「あの子のこと,どうした方がいい」 「あのこのこと___」 「あの子のこと___」 日常的に,人前で話しにくい子供のことは,全部「あの子のこと」としてあらわされてしまう。 一人として,同じステータスの人間なんて存在するわけないのに。どうしてひとまとめにしてしまうの? 分からない。 そして,私も,たった今ひとまとめにされた。 「あの子のことなんだけど,やっぱり,助からないって。」 「保険請求しなきゃな」 「どうしてあなたはいつもそうなの!悲しいとか,思わないの?あの子は,あなたの娘よ?」 「あの子のことは気にしてないんだよ,隆がいればいいんだよ,隆が」 「意味分からないわっ!!血のつながりがあるのに,隆がいれば,あの子…瑠菜はどうなってもいいってこと!?」 ちなみに隆は私の兄で,瑠菜は私の名前だ。 「隆が心配だから行かせてくれよ…そうだよ,瑠菜なんか価値はない」 「もし,瑠菜が天才でも…?」 「そうだ。女なんか,子供をくれるただの機械さ」は…?私,助からないって言ったって,隆はあんなに心配してくれるのに…。 やっぱり,生きてる間に怒っておいた方がいいよね。 「ふざけないでよっ!!!!」 「瑠菜…?」 「なんだよ」 「まぁ私死ぬし?価値はないかもしれないけど,隆は!あんたのもんじゃない!隆でさえ,心配してくれるのに…。」 「隆が?!ほめてやらないと!出来損ないの女も心配なんて…!」 「そこ…?でもね,あんたの思っているような人間じゃないよ,隆は。お見舞いに来ないお前のことを!!」 「ゲホッ…。」 「瑠菜?!大丈夫?!一旦深呼吸」 「大、丈夫。隆はね…。お前のことを…。馬鹿者だって言ってくれたよ。なんで娘の心配しないんだって」 「はっ…(笑)。それが?」 うーん…。だめだね。 怒ってみたけど,やっぱり駄目だよ,隆,いや,お兄ちゃ、ん。 ピッ…ピー!ピー! 心電計が警告する。 靄のかかった景色が広がる。 お医者さんたちが,たくさん来た。 なんで針また刺すの。 あー,助からないんだね。 いいよ,別に。 心配してくれた人はいるし。 にっこり笑って逝ってあげる。 おやつ,もう一回食べたかった(笑) あれ,お兄ちゃん。 なんでそんな泣いてるの? あれ,瑠菜,瑠菜って,聞こえてるのに…。 涙が,つたってきた…(涙) あの子のことって,言わないの? 死んじゃう…? にこって,笑ったよ。 だから、さ… ピー――――― 病室に,無機質な音が響き,嗚咽だけが残った。

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