あの紫陽花に恋情を
都会の雑踏、傘に雨粒がこぼれて地に落ちて、黒に紛れて消えて行く。 どこか憂鬱でノスタルジックな世界。 毎年、この時期になれば思い出す。 手酷い別れかたをした君のこと。 「この丘の紫陽花が散るときにここで」 __約束しよう、貴方に恋の返事を返そうと__ なんて愚かな。 取り消しようもないそんな言の葉。 そろそろ紫陽花が散っているかな。 そう思って向かったそこ、散り落ちずにそのまま枯れて汚い紫陽花が目に飛び込んで。 ああ、此を見た貴方はきっと誤解しただろう。 私が遠回しに断りを告げていたのだ、と。 そんなこと有りはしないのに。 ああ、ああ、そう言えば。 私が「約束」したとき貴方の瞳から、大粒の滴が。 君は知っていたんだろうな。 そうだ......今になればもう遅い。 時は還らないのだから。 あの日の枯れてはくれなかった紫陽花のよう。 ずっと私の心に染み付いた、苦い記憶。 謝罪しても意味なんてあるわけがない。 でも、つい、意味がなくても。 「ごめん」 せめて、今の貴方が紫陽花ではなく。 山梔子のような幸せと共に生きていることを願っています。