短編小説みんなの答え:1

2度生まれる

もうお昼ご飯は済ましたというのに 今日は午後になっても妻と娘がキッチンにいた まだ3歳の娘がエプロンをつけ椅子を台にして妻と何かやっている 何かとはまだ聞かないほうがいいだろう ほのかに甘い匂いがする どうやら僕はこの場にいないほうがいいだろう  そう判断し2階の自室で時間を潰すことにした 1階から楽しそうな声や、調理器具の音をBGMにしながら読書をした 「できたー!」という娘の歓声が聞こえたため、きりの良いところで読書をやめ、 一階に戻った、すると部屋は真っ暗だ ここは知らないフリをしたほうがいいだろう、 「なんだ部屋が暗いな」 わざとらしい声をあげてダイニングルームに入るとやはり2人とも席についていた 「火は危ないからロウソクだけ立てようね」妻が娘に言い、机の真ん中のそれに一本のロウソクをさした 「でもこれじゃ真っ暗だよ」 「ああそうね、電気をつけましょう」 「何だ何だ」ぐだぐだだけどそれも微笑ましいので演技を続けた 妻が電気をつけると部屋が明るくなり 眩しくて目をつぶった 目を開けるとそこには大きなホールのショートケーキがチョコのプレートが乗っていて 「パパ1歳の誕生日おめでとう!」 と書いていた 「パパ誕生日おめでとう!!」 「わぁすごいこれ2人がつくったの」 「1のところゆきが書いたの!」 「数字が書けるのかすごいぞ!」 なるほどまだ娘のゆきは1しか、かけないのか それならパパは1歳になるぞ! 「そうかありがとうゆき!」 嬉しそうな顔をする娘の横に座る妻は…… 泣いていた 「ママ、パパ喜んでくれてるかな?」 「ええ、そうねきっと」 妻にそっと手を伸ばす でも僕は妻に触れることができなかった 「……ああそうか」僕は1年前自分の誕生日に死んだ、幼い娘と若い妻を残して 幽霊の僕が生まれて1年だから僕は1歳 「…ありがとう」でも来年からはもういいからね 二人の頭をなでた 1歳の僕にさようなら 二度生まれる

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