切望
「ヴッヴーーーヴッヴーーー」 スマホのバイブ音で目が覚める。 まだあまり働いていない頭でパンを焼きながらスマホでラジオをつけた。 ー2067年4月○日です。ニュースを始めます。いよいよ今年11月からSCフィルム内に一般入居者の受け入れが始まることが決定しました。既に入居希望者は殺到していて、インターネットが混みあっている状態です。なお、入居者予約は来月10日まー ラジオを消してスマホをソファに投げた。 馬鹿げている。 よく分からないフィルムの内で住むのに月500万は明らかに詐欺なのになぜここまで希望者で溢れかえっているのだろうか。 しかも全国放送をするなんて、、、、、 日本も落ちぶれたものだ。 そうこう言ってるうちにパンが焼けたので学校に行く支度をする事にした。 今日の気温は52℃。今日はまだ比較的涼しい方だから防暑服の冷却機能はパワーレベル2で行けそうだな。 そう思いながら充電していた白い防暑服を下着の上から着て、チャックを閉めた。 鏡で身だしなみを確認しながらもう見慣れてはいるものの、防暑服のせいで雪だるまみたいになった自分を見てうんざりする。 40年くらい前に生まれたかった。雪だるまみたいなのじゃなくてカラフルで色んな形の服を一度でいいから着てみたかった。 死んだお母さんやおばあちゃんなら1着くらい持っていたのかもしれない。 くだらないことを考えていると通学バスがあと3分で着くことに気づき、急いで家を出た。 鍵を閉めて外へ踏み出しても、今日も自分の足音しか聞こえない。 小さい頃はよくカラスに遭遇し泣いていたがこの世界からノイズをすべて排除した今、少しあの煩い鳴き声が恋しく思う。 防暑服の中でイヤホンをセットして私は52℃の世界を歩き出した。