このゲートを通り抜ければ、なんだって出来る。
暗い。暗い。なにも見えない。 「あれ、私何してたっけ……」 「ここはどこ……?」 なにも思い出せない。 なにかおかしい。いや、絶対おかしい。思いっきりまぶたを閉じてみる。暗いから、上手く閉じれたか分からないけど。開けてみると目の前にゲートがあった。 大人だとくぐらないといけない位の高さ。辺りを見渡すと、私を囲むように無数のゲートがある。 それらのゲートは、赤、青、黄色、ピンク、紫、緑。全て、白以外のそれぞれ異なる光が中から溢れている。 「さっきまでなかったはずなのに」 背中がざわつく。暑くなんてないけど、汗がじわじわ溢れ出る。怖い。すると、目の前の赤色のゲートへと足が向かってゆく。 「え、なんで……?そっちはダメ!」 自分の足だと思うものは、言うことを聞かない。きっと、まずいことになると思う。ダメ、ダメ。必死に抵抗しようとしても体は微動だにしない。 そしてついに、視界が赤色に染まった。 学校の屋上だろうか。多分、体操座りをしていると思う。幼児くらいの目線の高さだ。コンクリートがひんやりと冷たいような気がする。 「なあ、サンドイッチ買ってきたけど食べるか?」 「わっ!びっくりさせないでよ! ……食べる。」 振り返ると男の子がいた。だけど、知らない子。高校生かな。見上げているせいかもしれないけど、すごく背が高い。すらっとしている。 「なに見てんだよ。」 「いや、なんでもないよ。」 目をそらしコンクリートの模様を目でなぞる。知らない子なのに、どこか安心していた。 男の子が私の横に座り、「ほらよ」と私の口にサンドイッチを放り込む。少々強引だが、美味しい。卵の味がする気がする。 「久しぶりだな。こうやって一緒に過ごすのは。」 男の子の顔から目をそらし、正面を見てみると、赤い光があった。それは夕日だった。 強烈なほど真っ赤に光っている太陽は、言葉を失うほど美しい。さっきまで意識していなかったけど、体がぽかぽか温まる気がする。包み込まれるような、引き寄せられるような感覚。思わず見とれていると、視界が赤色に染まった。 暗い。暗い。だけど、この場所では一目で分かる。すぐそこに、強烈な白色の光を放つゲートがあった。 直視すると、頭がクラクラしてしまう。思わず目を閉じる。すると、目の前のゲートに向かって足が進み出した。もちろん、自分の意志ではないけど、大丈夫。怖くない。 「おーい」 ん……?誰かの声が聞こえたような……。 「朝よ!起きなさい!」 一階からお母さんの声が聞こえる。……朝か。「はーい」と適当に返事をし、毛布を蹴っ飛ばす。少量の光が漏れているカーテンを、思いっきり開けると、多量の光が部屋に溢れた。 まだ、朝日が顔を出す前だった。遠くの山の縁が明るくなってゆく。緑が赤色へと変わってゆく。 カーテンを開ける、いつもの日課だけど、なぜか今日は違う気がした。 「なんだろう。少しムズムズする。」 いつの間にか顔を出していた太陽は、言葉を失うほど美しい。体がぽかぽか温まる。 こんな朝日を誰かと一緒に見た気がする。それが朝日だったか、もしかしたら夕日だったかも知れないけど。分からないや。 「まあ、いいや。朝ご飯を食べよう。」 私はまた今日も無数のゲートから一つを選んで、色々な体験をする。楽しいことや、素敵なものを見たり、はたまた危険なことも。なんだって出来る。 そう、頭の中で。