3月3日にあの人が願ったのは。
あの人はいつも明るい人で。 幼い私にも誰にでも優しい人で。 私はそんなおじいちゃんが大好き。 おじいちゃんは漁師で、とっても働き者なのだそうで。 毎日みんなで美味しくご飯を食べて、毎日笑って。毎日笑顔で日々を過ごせる。 そんな日がずっと続くって思っていたんだ。 忘れもしない3月3日。私が幼稚園から帰った時。家族はおじいちゃん以外みんな居たけど、 みんな珍しく涙を流していた。 おじいちゃんが海に落ちて行方不明なのだという。 当時の私はその小さい頭で考えた瞬間、大泣きしだしたという。 それから後は覚えていない。今でもおじいちゃんは見つからないし、帰ってきていない。でも3月3日になるたび、キッチンにある重力タイマーが勝手に鳴り出すようになった。あの人が 家に帰りたかった。 という願いだろうか。 来年の3月3日もまた、タイマーは鳴り出すのだろう。あの人の最期の願いを、思いを。