湖のカフェ
わたしは、ゆな。5さい。 村のはずれの、小さな家に住んでいる。 きのう、お母さんが病気にかかってしまった。 その病気を治すには、あの森にしか生えていない、黄色い花をとってこなければいけない。 市場に行くとたまに売っているけれど、高価すぎてとても買えない。 わたしは、その森に、黄色い花を取りに行くことにした。 その森は、村長さんにも、お父さんにも、いっちゃだめだよ、と言われている。 なんでかというと、へびさんがいたずらをしちゃうから。 でも、お母さんの病気を治すためには、黄色い花が必要。 勇気をふりしぼって、森の中へと入っていった。 森の中に入ってからちょっとしたころ、まだ朝なのに、夜みたいに、あたりは暗くなっていた。 怖くて泣きそうになったけど、これもお母さんのため。 …と思ったけど、後ろからカサカサとなっているので振り返ってみると、目の前には大きなへびさんがいた。 そのへびさんは、絵本で見るのとは違って、目が赤く光っていて、鋭い目つきでにらんできた。 とうとうわたしは、泣き出してしまったんだ。 周りを見ずに、がむしゃらに走っていると、さっきとは違って空から光が降っているようなところに着いてしまった。 まんなかには小さな湖があって、葉っぱの先からたれる露が、ちゃぽん、となった。 足元には、うさぎさんとりすさんがいた。パン…みたいなのを、おいしそうに食べていた。 よくみると、奥の方にこじんまりとしたカフェがあった。 どこか、からだが行きたい、と言っている気がした。 気が付くと、扉の目の前にいた。勝手に足が動いた。 コン、コン。 古くなっていた扉を、優しくたたいた。ドアノブには、背伸びをしても届かなかった。 「はい、どうぞ」 奥から、太く、やさしい声がした。 「…。」 言葉を失った。なぜなら、目の前にいるのは大きなくまさんだったからだ。 目をこすったけど、何回見ても、くまさんだった。 おそるおそるカフェの中に入った。 「これまた、ちいさなお客さんだねぇ。どこからきたの?」 おびえているのを察したのか、さっきよりも声が高くなっていた。 「…そこの、村。」 「この森には、大きな蛇がいるから、きをつけてね。はい、サービス。」 コーヒー牛乳と、さっきうさぎさんとりすさんが食べていたパンみたいなのをくれた。 「くまさん、これ、なに?」 「スコーンだよ。さくさくしてて、おいしいよ。」 サクッ。ほんとだ、、、おいしい…! さっきまでの泣いていた顔が、笑った顔になり、くまさんも一緒に笑ってくれた。 のどがかわき、コーヒー牛乳をごくごくと飲んでいると、ふと窓ぎわの花に目が留まった。 キラキラ輝いていて、周りには蝶が3匹もひらひらと飛んでいた。 「っ!くまさん、あのお花、ちょうだい!」 今気づいた。そう、その花は、あの黄色い花だったのだ! 「…お母さんが病気になっちゃって、この森にその花を探しに来たの。お願い!」 必死に、くまさんにお願いする。 「あぁ、あの花?いいよ、お母さんのために来たのか、えらいねぇ。」 「ほんと!?ありがとう!」 「お母さん、治るといいね。」 くまさんが、なにかのボタンを押したが、気にせずにドアの前に立った。ドアは、クマさんが開けてくれた。 「っ!」 また、言葉を失った。ドアの外は、私が住んでいる村の近くだったからだ。 ドアを出て、お礼を言おうと振り返ったけど、もうすでにカフェは消えていた。 それでも、全力で「ありがとう!」と叫んだ。 家に帰って、お医者さんにこの黄色い花を渡した。 あのくまさんのこと、カフェのことは、秘密にしておいた。というか、言いたくなかった。 お母さんの病気は治った。 お父さんに、「ありがとうな、ゆな。えらいぞ」と褒められた。 復活祝いに、スコーンをつくり、コーヒー牛乳を淹れてあげた。