お別れ
お別れは心の準備ができないものです。故に、誰もが恐れていることでしょう。 それは、わたしだって、お姉様だって、クラスのみんなだって恐れているはずです。 「…ほんとうは、お姉様を、守りたかっただけだったんです」 突然口からあふれたそれは、もはやわたしのものではありませんでした。 「なのに…わたしが、お姉様をあんなことにした」 「きっと、これは神様からの罰だったんです。最低な、わたしへの」 …なんのことなのか、まったくわかりません。 「…うらんで、いますよね。お姉様はわたしに消されたようなものですから、とうぜんです」 そんなことありません。 わたしがお姉様を消したりなんてするわけが無いです。だって、大好きなんですから! それでも、わたしは床に落ちていたカッターナイフをひろいました。 「……だから…これで、これで最後にするんです。こことお別れするんです!」 カッターナイフの刃が、首筋にあたろうとしたその時のことでした。 「やめてください。あなたは、何も悪くないんですから」 そういって、幼い少女がわたしの手からカッターナイフを奪いました。 「……!」 久しぶりに聞いた、あたたかい声。長くてきれいな黒い髪の毛。わたしは確信しました。 「……おねえ、さま?」 「お久しぶりですね。元気にしていましたか?」 そういって微笑む、わたしの…大好きなお姉様。 「そっか、そういうことだったんですね…」 わたしはやっと気がつきました。 ___この笑顔こそが、わたしの守りたかったもので…一番大事なものだったということに。