満月
僕は満月の日に親友を亡くした。今でもその子の顔を見ると涙が出る。 亡くなってすぐは動けなかった。そのせいかずっと栄養失調という病気にかかってしまった。 「僕はこのままでいいのかな」 親友が亡くなってから一年がたったある日の満月。 満月を見ると少し恨んでしまう。でも月は何も悪くない。 「今日…満月…か…」 … 「親友のところに行こうかな」 僕は何も残していない。悔いもない。 だから向こうに行こうとした。 そのとき、誰かの声がしたんだ。 「……め……よ…」 僕は振り返る。ただ誰もいない。 「だ……め……だ……い…き…て…………よ」 親友の声がした。確実に。 僕ははっとした。 『親友の分まで長生きしてもっともっと親友が笑顔になるようなことをしないとね』 僕は今日も、これからも。 辛くても生き続ける。それが僕だ。 ーーーーーーーー 読んでくださりありがとうございます!! 初めての短編小説どうだったでしょうか、、?良かったら改善点とか、良かった点を聞かせてください!! よろしくお願いします!!
みんなの答え
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転生悪女は今日も頑張る。
死んだと思ったら、悪女でした。 「えぇぇぇぇぇ。」 鏡に映った自分自身を見て思わず叫ぶ。 仕方ない、だって事故で死んだと思ったらまさかの大好きな漫画の悪役令嬢に生まれ変わってたんだから! いやぁ、死ぬなら転生したいしトラックに轢かれて、って決めてたけどまさか本当に生まれ変わるとは。 驚きだよ。 状況を整理しよう。 イライザ•アイスベルク(現在13歳) 一応、公爵家長女。 物語の舞台はルミエ王国。 魔法の存在する異世界である。 主人公は私の双子の妹、ソフィア•アイスベルク(なんか妹の方が名前可愛いんだけど!) 話の流れをざっくり説明すると、姉にいじめられ続けたソフィアが、魔法学校で王子と出会い、付き合い、嫉妬で自分を殺そうとして悪魔化した姉を王子と何人かの人たちと一緒に倒し、ハッピーエンドという王道ストーリー。 つまり、私は死ぬ。 5年後くらいに。 ……って!そんな悠長にしてられん!私死にたくない! 未来を変えるため、これから頑張っていくぞ! まず、私が真っ先にしたのは筋トレと魔力の特訓だった。 確か、私は王子に腹を刺され、ソフィアの魔法で死ぬ。 悲しいことに私は光属性のソフィアと違い、闇属性。つまり、彼女は私の弱点。 どっちも強いんだけどね! しかも、ソフィアは物語の中盤で全属性になる。 魔法で倒されないためにも特訓は必要! この世界一応剣が主流だし、剣で刺されるから扱えるようになっておきたい! 逃げるための体力も必要だしね。 参考書を読んで、一人、部屋で魔力の特訓をし、毎朝走り込みをし、お小遣いで買った剣で素振りをする日が何日かが続いた。 そんなある日、夕食の時間に王族とのお茶会の話がされた。 「王族とのお茶会!?」 「あぁ、多分婚約の打診だ。非礼が……。」 王族とのお茶会。 漫画での超重要イベントだ。 確か、ここで私は大失敗をして王子から悪女のレッテルを貼られる。 つまり……死亡フラグ! 全力で回避しないと! でも、肝心の「大失敗」を私は覚えていない。 部屋に帰るなり、私は次女のマリーにお願いした。 「マリー!お願い!私に作法と刺繍を教えて!」 「あのお嬢様が……。もちろんです。」 とてもびっくりされた。 確かに私は、妹をいじめたおす悪女だったけど……うん、普段の行いだね。 こうして、日課に作法が加わり、さらに忙しくしているうちにお茶会の日がやってきた。 うわぁ、大きい。 お茶会の当日、私はソフィアと、お目付け役兼従者のマリーと一緒に王宮に来ています! 招待されてる側だからね! 王宮めっちゃ大きい。 しかも華やか。 初めての王宮に踊りそうな心を必死に押さえつける。 ここは死亡フラグ満載の危険な場所なのだ! 走行している間に、部屋についた。 なんか、絵画がいっぱいある!高そうな壺もある! ソフィアと二人きり、話題を探しているうちに、扉から金髪のイケメンが現れた。 王子、ルーク•デュ•ルミエだ。 後ろから側近であり護衛騎士のキースもついてきている。 私たちは立ち上がってお辞儀をした。 「アイスベルク公爵家長女、イライザ•アイスベルクです。以後お見知りおきを。」 「アイスベルク公爵家次女、ソフィア•アイスベルクです。以後お見知りおきを。」 「ルミエ王国第一王子、ルーク•デュ•ルミエだ。本日は来てくれて感謝する。座ってくれ。」 私たちが座ると同時に、お茶やお菓子がやってきた。 私も手土産を出し、お互いに毒味をして見せて食べる。 よしよし、習った通りにできているぞ。 お互いに当たり障りのない話題をしつつ、お菓子をつまむ。 お茶会は、何事もなく進んで言った。 「あ!私、ルーク様に渡したいものがございますの。」 私の言葉でマリーがサッとハンカチを持ってきた。 少し恥ずかしそうな演技をしてそれをルークに渡す。 「その指は。」 「お恥ずかしいことに、少し失敗してしまいまして。」 指に巻いてある包帯を見てルークが心配するところも計画通りだ。 残念ながら、怪我はしていない。 好感度上げ作戦の一環だ。 「見事だな。」 「そんなそんな。」 キースが私のハンカチを見てそう褒める。 ふっふっふ。いい感じだ。 そのまま、万事筒がなくお茶会は終わった。 よかった、脂肪フラウ回避だ。 天性悪女は、これからも頑張る。
いつまでも、君の側に
「誕生日は、普段よりも死ぬ確率が高いんだって」 そう言って笑いあった君は、もう、いない 今日は君の誕生日で、私たちの付き合い記念日で だから、ふたりでデートの予定をずっと前からたててたのに 約束の時間を30分越えても、君はまだ待ち合わせ場所には現れない いつもなら、私より早くきてくしゃっとした顔で笑うのに、 連絡しても既読ないし、電話も繋がらない 私との約束、忘れちゃったのかな、それとも... 悪い予想が、私の頭をよぎる そんなこと考えてはだめだ、きっと寝坊しただけ、そう自分に言い聞かせる そのとき、アナウンスが流れた 電車が一時停止するらしい。人身事故があったんだって その路線を聞いて、私の背中を冷や汗がとおった 君が、いつも使っている路線だ 電車がとまるだけなら連絡できる、それなのに連絡がこないってことは、、 だめだ、これ以上考えてはいけない。そうわかっているのに 考えたくもないことが次から次へと浮かんでいく 気づいたときには、走り出していた 君が、いるかもしれないその場所へ 走りながら、色々なことを考えていた もし私の予想が当たっていたら、もし本当に君がいなくなってしまったら___ だめだ、耐えられそうにない そんなこと考えたくもない。 私は走った 嫌な予想を振り切りながら、自分に言い訳しながら 息が苦しい、足も重い、それでも止まれなかった 涙か汗かわからないくらい顔がぐちゃぐちゃになっているとわかる それでも止まれないんだ。一刻も早く君のもとへ行かないと、、 ついたとき、君は、担架で運ばれている最中だった 血まみれで、ぐちゃぐちゃで、君かすらよくわからなかったけど、服装も髪型も、雰囲気も、私が知ってる君のすべてで 私が君を見間違えるはずがない てことは、本当に、君は... 目の前が真っ暗になった 地面に膝をつき、声にもならない声をあげる 今日の時間と場所を決めたのは私だ。 私が少しでも変更していれば、君は助かったかもしれないのに、辛い思いをしなくてもすんだのに__ 君が死んだのは、私のせいだ その事実が、強く私に突き刺さる 私のせいで君はいなくなった、1番大好きで、大切で、愛していたのに 毎回大切なものは自分で壊してしまう、 なんで、なんで私は、毎回こんなんばっか...っ 本当にごめんなさい 私のせいで、いつもいつも迷惑かけて、最後ですら私のせいで__ まだふらつく足で立ち上がる 私のせいで君は死んだ。 君がいなければ私の存在価値なんてない 君が、私の生きる理由をつくってくれてたんだ 待っててね、すぐそっちに行くから もう、大切なものをなくしたりしないから だから、あと少し、もう少しだけ待ってて 手すりにしがみつきながら階段を上る 救急車のサイレンの音、それがさらに私を追い詰める はやく、はやく君のところへ行かないと その気持ちだけが私を動かす そのとき、急に目の前が明るくなった 遠慮気味に開かれた窓から、日差しが差し込んでいる ああ、もうすぐ君に会えるよ やっと君と一緒にいれるんだね、 私は微笑みながら窓に手をかける 暖かい日差しに包まれて、自然と口角が上がった 柔らかい風が私の頬を撫でる 私は、その風にのるように身を投げ出した ふわりと優しい風に包まれる 地面が目の前だ 私がそっちに行ったら、君はどう思うかな 来るのがはやいって怒られちゃうかな、それとも... そんなことを考えているうちに地面は迫ってくる 考えてもきりがない、そんなの君に会ってから話せばいいか 私はまた風に身を任せる 今から、君に会いに行くよ___ 気づいたら、君が目の前にいた 驚いたような、ほっとしたような、そんな表情だった やっと君に逢えた ずっと、逢いたかったんだよ これからはずっと一緒にいられる、 色々な感情が襲ってきて、涙がこぼれる 君は、いつもの優しい表情で微笑みながら、静かに涙を流していた 『ねえ、私ね、君といられて、すっごい幸せだよ』 今までの想いを、君に吐き出す やっと一緒にいられるね、愛してるよ でも___ 君は、まだ苦しそうに笑っている どうしたの、ねえなんで、君は苦しそうなの? 私と一緒にいられるんだよ...? 「なんで...なんで僕と一緒に」 そのとき、君の声が微かに聞こえた それはほんとに辛そうで、苦しそうで どうしたの、と問う必要はなかった 君が、続きを話してくれた どうやら君は、生き延びたらしい それに気づいて、嬉しくて、涙が溢れた 私はもう死んだ でもね、これからはずっと君の側にいられるよ だからこれからも長生きしてね、いつまでも君のことを見守ってるから___ 冬華です!! 楽しんで頂けたら光栄です 文字数制限が、
いつかまた、雨の降るこの場所で。
私は1人の男の子に恋をした。 かっこよくて、面白くて、優しくて、そして誰よりも雨が好きな君に。 「愛芽ー!かえろー!」 ひょいと教室の後ろのドアから顔をのぞかせたのは、親友の優奈。私はスマホの天気アプリを閉じ、椅子から立ち上がった。 「また天気予報みてたの?なんか今日予定でもあるのー?」 「ん、いや?」 雨の日は彼に会える。 そんなこと、優奈にすら言えるわけがない。だって、きっと信じてくれないから。 「てか、天気どーだったの?」 「これから小雨が降るみたい。でもすぐやんじゃうんだって」 「へえ」 優奈は自分から聞いてきたくせに、さほど興味がないような返事をする。むっとなったけど私も前まではそうだった。むしろ、雨なんて大嫌いだった。 でも、雨の日は彼と会えるから。 家につくタイミングで、ぽつり、ぽつりと雨が降り出す。私たちは小走りに互いの家へ駆け込んだ。少し濡れた制服を着替える時間も惜しく、裏口から家を飛びだす。 向かった先はいつもの空き地だった。 「あ、愛芽!」 彼はそこにいた。傘もささず、濡れた金髪にくしゃっと手を置いて笑う彼が。 「いつからいたの」 「何億年も前から」 そんな冗談を笑顔で言う彼は、きっと太陽の下でも同じように笑うのだろう。透き通った金髪を日光に反射させて、爽やかに手を振ってくるのだろう。 でも、その姿を私は見ることが出来ない。 彼は雨の日にしか現れなかった。 「どうして雨の日じゃないといけないの? 晴れの方がいいでしょ」 1度だけ、まだ出会って間もないころ、水滴を滴らせる葉っぱを眺めていた彼に、問いかけたことがあった。 「愛芽はそう思うの?」 「え?うん」 「俺は、雨が好きだな。てか、晴れは嫌いだからさ」 あめが好き。 それは天気の"雨"で、"愛芽"じゃない。 わかっているけどついドキッとしてしまう。 「逆になんでみんなは晴れが好きなの?」 ふと、背中越しにそんな声が飛んできて私は動きをとめた。なぜだろう。正面から聞かれたことは無かったので戸惑ってしまう。 「ぽかぽかして気持ちいいし、雨だったら嫌だし…」 「なんで雨だったら嫌なの」 「え?」 彼はようやく振り向いた。すっかり濡れて黒色になったパーカーのポケットに手を突っ込み、こてんと頭を傾ける。 「じめじめしてるし、気分が下がっちゃうし、濡れるの嫌だし…」 「んー、たしかに笑」 「えっ、否定しないの?」 彼はもう興味がなくなったように、上を向いて雨を浴びている。目を閉じて、気持ちよさそうに。 「こー目を閉じて雨を浴びてるとさ、嫌なことぜーんぶどうでもよくなってくるんだ。雨が全部流してくれるから」 それを聞いて、思い出す。彼と初めてであった日のこと。 私がお母さんと大喧嘩して、泣きながら家を飛び出したんだっけ。無我夢中で雨の中走って行き着いたのは、この空き地だった。その日も、彼は雨の中野良猫を撫でていた。涙でぐしゃぐしゃで、髪の毛も制服も濡れて見るも無惨なわたしを、何も聞かず隣に置いてくれた。 「てかさ、まだ3時でしょ。学校は?笑」 今日も、あの日と変わらず、興味がなさそうに話しかけてくる。きっと彼にとって私は、ある日突然現れた知らない女の子。それ以上でもそれ以下でもない。 「今日は部活がないから早く終わったの」 「ふーん」 もうすっかり興味をなくした彼は、面白いものを見つけたのかしゃがみこみ、何かを差し出してきた。 「よつばの…クローバー…?」 「そこの隅に生えてた。やっぱ俺、雨の日は運がいいんだ。雨男だなー」 嬉しそうにそう話し、再びキョロキョロ探し出す。私は手の中でクローバーを転がした。 「いいの?もらっても」 「ん?別にいーよ。俺が持ってたところで意味ないから。四つ葉のクローバーなんてなくたって雨が降ればいいんだ」 へんなの。いいかけて、動きを止める。 クローバーの水滴に、差し込んだ光が反射してキラッと光った。 「雨も、わるくないかも」 結局すぐに雨が止んで彼は帰ってしまった。 それから彼は私の前から消えた。 引っ越したのか、なにか理由があってこれなくなってしまったのか。 次の雨の日、空き地には誰もいなかった。名前も聞いていなかったので、呆然と立ち尽くすことしかできなかった。 雨が降れば彼を思い出す。 「あれ、愛芽クローバーのしおりなんて持ってたっけ?」 「うん!てか次社会だよ!急がないと!」 雨の降る廊下で、笑いながら優奈の手をひいて走り出した。
吐き出せたらなら
「でね、その後が酷くって!」 「そうなんだ…大丈夫?」 友達の悩みをよく聞いてあげている。 友達が悩んでいるなら極力助けたいし、 話を聞くだけでも気を紛らわせられる。 友人は笑みを浮かべながら帰って、 私は愛想笑いを張り付かせながら見送る。 彼女の力になれてよかった そんな想いと 私の悩みは聞いてくれないよな という想いが浮かび上がる。 それがいつものルーティーン。 朝日に起こされて体を起こす。 まだ眠たい目を擦り顔を洗う。 朝食を摂って、たまの休日だからと 紅茶を淹れて。菓子を準備して、 映画を見て。 映画はとても面白かった。 面白かったのとは裏腹に、 紅茶も、菓子も、美味しいはずなのに。 不味く、筆舌し難いほど不味く感じて、 それを無理矢理噛み砕いて飲み込む。 それはいつものことなんだけれど。 就寝前。 自分のことを振り返っていた。 友達や親に信頼されて、 いろんな話を聞かされてきた。 聞きたくもない様なことも、自慢話も。 そういえば、私は何か話したことは あっただろうか。 不意に頭を掠めた思考は、 通り過ぎることなく頭の中を駆け巡った。 聞かされる度に吐きそうになった気持ち。 スッと心が軽くなった気がして、 トイレに駆け込んだ。 未だに気持ちは吐いていない。 もし吐けるとするなら、 あの日の紅茶も、菓子も吐いたのだろうか。 どちらにせよ、私には無理な事だった。 飲み込んでしまうから。
消える世界でもあなたと笑いたい。
私は青原紗奈。 ごく普通の中学2年生。 そして青春の毎日…を、おくるはずだった。 体の異変に気がついたのは、最近だった。 ついさっきまでのことが思い出せない、気づいたら知らない場所にいる_。 こんなこと、いままで1度だってなかった。 「認知…記憶障害?」 「はい。記憶障害の1種で、自分が分からなくなったり、物事を思い出せなくなります。あなたのケースは珍しく、進行が早いため、すべて忘れるのも時間の問題かと…」 「でも! 認知記憶障害って、認知症でしょう?まだわたし、13なのに…」 「確率が低いだけで、若いから絶対にならないとは言いきれません。稀なケースです。現在治療法も確定しておらず…」 目の前が真っ暗になった。 ぜんぶ…ぜんぶ忘れちゃうの? 家族も、友達も、大事な…人も。 - - - - - - - - - - - - - - - 「最近紗奈おかしいよ?大丈夫?」 「大丈夫。ちょっと寝不足気味でさ」 私はまだ病気のことを誰にも言えていない。 言ったらきっと、みんな離れていっちゃう。 「ほんと? 無理しないでね。紗奈が倒れたら、私もぶっ倒れる笑」 ももかは本当に明るいなあ。きっとこのまぶしい笑顔も、私は忘れてしまうんだろう。 「じゃあね!ばいばーい!」 手を振ってそう別れを告げるももかとみさきに、私も笑顔で手を振り返した。 2人とは家の方面が違うから途中で別れる。すると後ろから小走りでやってきた男子が、ぱしっと私の肩を叩いた。 「あっ、颯介!ひさしぶりじゃん」 「最近部活で帰る時間違ったし。あてか明後日修学旅行じゃん。楽しみ!」 颯介は私の幼なじみで隣の家に住んでる。 別にそんなんじゃないよ?!ただの…友達だから笑 「そうだね、楽しも!」 さすがに明後日は大丈夫だろう。 そんなに急激に進行することはないはず…。 そして私の体調は良くも悪くも変化せず、無事に修学旅行当日を迎えた。 「みて、紗奈!きれいだよ!海の上!」 隣の席になったももかがら目を輝かせて叫ぶ。 「そういえばこの橋、最近新しくでき…」 ずきん。 突然、目の前がぐるぐる回るような、自分が浮いているような不思議な感覚に包まれた。なになに? いったい私どうしたの?! すると突然視界がパッと切り替わった。 「え?!嘘…ここ、ホテル…?」 うそうそ、嘘嘘嘘嘘。 どういうこと? わたし、1時間くらい記憶なかったの? 嫌な予感に、ぞくっと身をふるわせる。 だけど、嫌な予感は見事的中。 たった一日とは思えないほど病気は進行し、だんだん自分が誰なのかさえわからなくなってきた。 ももかのことも、みさきのことも、龍馬くんや…颯介のことだって。 おもいだせない、わからない。あなたは… 「誰?」 そういってから、パッと口を抑える。 目の前で目を見開いて固まっていたのは… 颯介だった。 「お前…」 「う、うそうそ。気にしないで」 そういって薪割りに戻ろうとする私の手を、グッと颯介が掴んだ。 「おい、なにか隠してるんだろ」 「隠してなんかないよ…。ほら、先生くるし、はやく薪割っちゃわないと…」 目を逸らして手をふりほどこうとする私の手を、颯介はますます強く握った。 「話せよ。なんで話してくれないんだよ。最近の紗奈なんか変じゃんか」 「……颯介には、分からないよ!!!」 私はバッと強く手を振りほどくと、そう叫んでいた。颯介は唖然と立ち尽くしている。 やっちゃった。颯介にあたってしまった。 「俺には紗奈が何考えてるのかわからない。わからないから努力してきたつもりだった」 「わ、私だって…」 颯介の悲しそうな声に、ぐっと手を握りしめて言いかける。そこで気づいた。病気のことを言ってはダメ。きっと颯介だって失望して離れてしまう。 「私だってなんだよ?」 ああだめだ、一瞬目の前にいる人が歪んで見えた。この人誰だろう。 そう思ってしまった自分に泣きたくなる。 あれ、わたし、なんて名前だっけ? おもいだせない。おもいだせないよ…。 でもひとつだけ、わかるよ。まだ。 「もっと長くあなたと笑っていたかった。ずっと一緒にいたかった。でも、あなたといれて楽しかった。例えこの世界が消えたとしても、ずっと心の中には…」 あれ、私どうして泣いているの。 どうして目の前の男の人が泣いているの。 ここはどこ? この人はだれ? いや、私って…誰だっけ… 消えてしまったこの世界で、私は涙を流しながら笑っていた。