空の華『花火の夜に君は』
「、、、空華、お前は空の向こうへ逝ってしまったんだよな」夜空に浮かぶ打ち上げ花火を見ながら俺は呟いた。 彼女の空華(くうか)が病気であの世に逝ってから今日で一年。空華もこの美しい花火と一緒に空へと消えていってしまった。 彼女の明るさと美しさと優しさが俺の何よりの支えだったのに逝ってしまった。花火の音を聞きながら空華と初めてキスをした海岸へと行ってみる。 「空華、、、俺を迎えに来てくれよ」 嗚咽がこぼれ始めるともう涙を止めることはできなくて俺は静かに泣いた。 その時、最後の一発目の一際大きい花火が夜空を照らした。まさに、空の華、空華だ。花火は空華そのものだ。 その花火が完全に空へと溶けきるとどこからか手紙がふわりと飛んできた。反射的に俺は受け取る。 「彼方へ。空華だよ」誰が言ったのか分からない。でも、俺はこの声を確かに知ってる。誰よりも知ってる。 震える手で俺は花火模様がついた手紙を開いた。 「彼方へ 空華だよ。彼方、元気にしてる?ちゃんとご飯食べてる?ちゃんと寝てる?」 全然食べる気もしていないし、満足に寝ていない。君がいなくなってからは。 「彼方、そんなんじゃだめだよ。私が好きな彼方はそんなんじゃない。彼方は単純そうに見えてすごく繊細だからいつか心が脆くなって壊れちゃわないかすごく心配。 だけど、そんなんじゃだめ。彼方はね跳ぶために生まれてきたの。私は美術室からいつも彼方を見てた。ふと空を見たときにしなやかに美しく跳んでそのまま空に飛んでってしまいそうな鳥みたいに飛んでってしまいそうなそんな彼方に私は惚れたの。いつも彼方を見てた。だからね、棒高跳び止めちゃだめだよ。この世で一番美しいのは彼方の高跳びなんだから。これは私からのお願い。彼方は私のお願い事は断れないもんね。向こうからも私は見てるから。私に跳ぶ彼方を見せてよ。私は世界で一番阿久津彼方くんが大好きです 丹羽空華」 その名前を見たときにはもう俺の涙は止まっていた。泣いてはいけない。空華が悲しがる。このまま空華に会いに行っても空華は絶対会ってはくれない。 最近、陸上の棒高跳びもやっていない。でもこんな俺じゃだめだ。俺は誰よりも、世界で一番美しく空を跳ぶ、阿久津彼方なんだ。 どこからか空華の鈴のような笑い声が聞こえたような気がした。 それに応えるように俺は陸上の顧問の元へと走り出した。―――――これが俺の使命なんだ