短編小説みんなの答え:3

日差しが地面を照りつける、夏の暑い日。私の恋は…

日差しが地面を照りつける、夏の暑い日。 私の恋は、始まりを告げた。 目の前を通る人影に思わず顔をあげた。 私ー桜井詩織(さくらいしおり)の前を通ったのは、やはり大好きな彼ー加納莉斗(かのうりと)。 さらっとした髪の毛に、吸い込まれそうなほど大きく、澄んだ瞳。 あんなに眩しい彼の隣に私がいられるわけがない。何もかも平凡で、特別な要素がないから…。 分かっているけど。 それでも私のことを少しでも見てくれないかなあって思ってしまうのは、やっぱり加納くんが好きだから。 私が恋を自覚したのは、ちょうど1年前。 きっかけはよく覚えていない。ただ、気づいたら好きだった。 かばんからお弁当を取り出し、手に持ったまま席をたつ。 その時、笑顔で私のもとに彼女が向かってきた。 「詩織!今日は中庭で食べたいんだけど、いいかな?」 「うん、もちろん。行こう」 「ほんと?ありがと!実は、ちょっと話があってさ」 そう言って前を行く彼女の後ろを私は着く。 彼女は中嶋楓(なかじまかえで)。私の幼い頃からの親友。 何もかも平凡な私と比べて、彼女は特別だ。 背が少し高くすらっとしていて、だけど幼い一面があるというギャップ。おまけに優しく、美少女。 そんな彼女と中庭のベンチで隣あって座った。 お弁当箱のふたを開けながら、楓が口を開いた。 「ねえ、詩織。私、好きな人ができた…」 「え?だれだれ…!?」 あの美少女の楓が恋。誰がライバルでも、楓の恋は実る…そんな予感がしてる。 楓の恋路をどうやって応援しようか。そんなことを考えていたとき、楓は頬を赤く染めて言った。 「加納くん。私、加納くんに恋してる」 「へ…?」 思いもしなかった人の名前が楓の口から飛び出した。 驚きとショックのあまり、私は言葉を失った。 「加納くんさ、まず超かっこよくない!?それに、この前親切にしてもらったんだあ…好きになっちゃうよ…」 顔を赤くした彼女を見て、私はぎこちなく笑った。 頭が真っ白になって、この後どんな会話をしたのかも、よく覚えていない。 楓は恋愛に積極的であることを私はこのとき知った。 休み時間などで楓はときどき加納くんに話しかける。 「加納くん、ごめん。解説聞いたんだけどさ、ここが分からなくて…教えてほしい」 「ねえねえ、加納くんって彼女いたりする?」 「次数学だって…私数学苦手だから嫌だなあ。加納くんは数学得意?」 2人が話すとき、お互いがお互いを見ていて、笑顔が多い。 その光景を目にするたび、私はぱっと目をそらす。 胸がずきずきと痛む。 そんな時、近くから数人の女子の声が聞こえてきた。 「ねえねえ、加納くんと中嶋さんってお似合いだよね!」 「分かる!美男美女って感じ」 「付き合うのも時間の問題な気がするなあ」 分かってる。そんなの私が1番分かってるよ。 最近お互いを名前で呼んでるのも聞いたことあるし。 楓のことも、加納くんのことも大好きなのに。でも、もう分かんなくなっちゃったよ。 ある日の放課後だった。 今日は楓と一緒に帰る約束をしていて、校門前で待ち合わせになっていた。 私が昇降口で靴を履き替えていた時だった。 「あれ?桜井さん?」 「え…?」 胸がとくんと高なった。後ろを振り向くと、そこにいたのはやっぱり加納くんだった。 「今帰り?」 「う、うん。加納くんは…?」 「僕はこれから部活のミーティングがあってね。…あ、急いでたんだった。またね!」 そう言って手を振って去ってしまった。 その背中に向かって手を振る。 加納くんが話しかけてくれた。それだけで、胸がいっぱいで。 ああ、やっぱり私加納くんが好きだ。誰にも負けないくらい、好き。 楓にとられたくない…! 胸がきゅうっと締めつけられる思いがした。 楓と話をしよう。楓に本当のことを言おう。意を決して私は校門に向かって歩いた。 校門には既に楓がいた。楓が私に気づいて手を振る。 私も手を振りかえして、楓の一歩前を歩いた。 「あのっ、楓…」 小さな私の声は楓の耳には届かない。 楓は私の声には気づかずに、嬉しそうに私の名前を呼んだ。 私は振り返る。 「詩織…!私、莉斗に告白されて、付き合うことになった…!」 世界がモノクロになっていくような感覚。頭の中が真っ白だった。 ああ、私はもう手遅れだったのか。 最初から分かっていた。分かりきった結末だった。 私は楓に背を向けた。そして、涙が頬を濡らさないように上を向く。 精一杯の笑顔をつくって私は言った。 「そっか。おめでとう」 日差しが地面を照りつける、夏の暑い日。 私の恋は、終わりを告げた。中2の夏だった。

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