短編小説みんなの答え:1

夕暮れの海、あの場所で

ザザーン…澄んだ波の音がする。懐かしいなあ。ーあれ?なんでだろ。あたしって海来たことあった? あたしは幽霊(わかんないけどたぶんそういうもの)。でも生前の記憶が全くなくて、名前も、住んでた場所も、なにもかもわかんない。 それは、突然のこと。いきなり衝動的に、海に行きたくなった。少なくとも幽霊になってからは海には行ったことはない。自分の死因が分かるかもしれない。ただひたすらそれだけを信じて、海がありそうな場所を探した。まあ、ありそうな場所すら分かんないけれど。がむしゃらに近所を飛び回っていると、男の子とすれ違った。外見からして、中学生くらいかな。その子には、見覚えがあった。ふと記憶が蘇る。まだぼんやりはしているけど。小学生かな。その子と似た男の子が、あたしの目の前に立っている。背景は…夕暮れ?波の音もする。なんだろう。なんだか話しかけなきゃいけない気がする!幽霊の声は人間に届くの?そんなこと考えてる暇はない! 「ねぇ」 男の子を呼び止める。 男の子が振り返った。「あれ…ユミ…?」 ユミ。聞きなれた響き。そう、あたしの名前だ。「あたしが見えるの?」驚きと同時に、記憶が蘇る。夕暮れの浜辺。そこにはあたしとテルが立っていた。男の子の名前はテルだった。 「ユミ、ずっと言いたかったことがある」「え…?」あたしは何かを察した。思わず恥ずかしくなって、あたしはその場から走って逃げてしまった。そうだ、あたしはそれを後悔しながら、海に飛び込んで死んだんだ。 そして、今なら、言える気がする。 「ねぇ。テル。」 今なら、成仏できる気がする。

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