花火が咲く頃に、君は。
君と初めて会った時、不思議な感覚がした。君の名前も、顔立ちも、声も。すべてがどこか懐かしかった。 君を初めて見たのは、まだ桜が咲いていた頃。部活の体験入部だ。僕は中3で君は中1。君は僕をチラリ、とみて目を見開いた。僕も同じだった。お互い一瞬の時だったはずなのに時の流れが止まるように感じた。君はハッと我に返り目を逸らしてしまったが、僕はその感覚が消えることが無かった。 君と僕は同じ木管楽器になったこともあり、よく話すようになった。LINEだって交換した。君は面白い子だった。優しくて穏やかなのに、天然で明るい。顔立ちは可愛らしく、歩く姿はまるで小鳥だった。見ていて飽きなかった。 受験生の僕は、家でも安らぎが少なかった。けれど君との時間は安らぎであり、癒しの時間だった。 「一緒にどこか出かけませんか?」君にある日そう聞かれた。「受験が終わってからでいいかな」僕はそう返した。そのことを後悔した。 君はー事故にあった。頭部の損傷が激しく、生きれても8月までだ..と。今はもう7/2日。あと1ヶ月も無いのだ。目を開けない君を見つめていると、堪えきれなかった涙が溢れてきた。僕は馬鹿だ..。それを見かねた母が僕に言った。「託海、来週の花火大会..一緒に過ごしたら?」そうしようと決めた。次の花火が咲く頃に君は居ない。僕は君の目前で泣いた。 7/9日、君は目を覚ました。「...た、託海先輩...ごめんなさい。きっと..受験..終わるまで..」生きられないからー。そう言おうとしたのだろう。涙を流す君を見て、僕は言った。「今日、花火大会があるんだ。一緒に..見ない?ここからでも見えるんだ。」「いいんですか?せっかくの花火大会..私とで..」いいに決まっている。失いかけてやっと人は気づくのだ。好きだったんだと。 「ドーン」花火の音が響く。君は窓に顔を向け、その花火を見つめている。なにを考えているのだろうか..。 花火の音の中、君は静かに話し始めた。「私は..ずっと不思議でした。小学校は同じと言えど、ほぼ初対面な託海先輩がどこか懐かしかったんです」驚いた。僕も同じだったと言うと君は目を見開き、「次の花火も、一緒に見たいです。」と言った。次の花火大会は、8/10日だった。生きてほしい。なんとか、一緒に見たかった。次の花火が咲く頃に君は居ないなんて、考えたくなかった。 8/10日、君は花火が咲いて散るのを眺めながら僕の腕の中で息を引き取った。「咲日」僕は君の名前を呟き、そっと手を握った。