悲しい、寂しい夏祭り
太鼓の音、響く笑い声、踊る人々 誘ってくれたのは友人の桜子 今日きたのは奈々、桜子、私。私は綾香 そして蒼斗、環、千隼 男子たちもみんな桜子が誘ってくれた 私は千隼が好きだった 千隼は学校が違くて、ずっと会えてなかった 本当に、本当に久しぶりに会える でも、素直に喜べない だって、千隼は桜子のことが好きだから きっと千隼は、桜子が誘ってくれたからきたんだよね 着付けしてもらった新しい浴衣 ひらひらと金魚みたいに泳いでた 千隼がいて嬉しい 確かに素直に喜べないとは思ったけど、やっぱり嬉しい 好きだから 「次、どこ行こうか」 「はい!!私射的行きたい!!」 「さすが桜子。射的得意だもんな」 「百円だってよ!良心的〜」 「ほら、行こう。綾香ちゃん」 次々と流れる会話 人見知りの私はうまく混ざれなかった 奈々が、私の手を引いて連れてってくれた 射的、輪投げ、かき氷にジュース 夏祭りらしいものを楽しんで、楽しんで 9時になる頃。桜子には門限があった 「ごめん!私もう帰んなきゃなのー!」 「そっか。またね、桜子」 羨ましい。桜子、千隼に名前呼んでもらって、またねだなんて 去り際に桜子は私の耳元で言った 「綾香、千隼と楽しんで!」 桜子。その千隼はあなたのことが好きなんだよ そんなこと言えるわけない 「うん。またね」 それしか返せなかった 桜子が帰ってから、千隼はどこか悲しそうだった やっぱり桜子のことが好きなんだな その事実が、チクチクと私の胸を刺激する 痛い。悲しい。寂しい 「綾香ちゃん、どうしたの?体調悪い?」 奈々の声で私はハッとした 「ううん、なんでもない」 「ごめん、僕帰るね」 それからすぐ、千隼はそう言った ああ、桜子、帰っちゃったもんね 桜子がいないと意味ないもんね 胸が締め付けられる。苦しい 「そっか。千隼、またね」 「うん。ばいばい」 "またね"じゃなくて"ばいばい" その一言の違いでも、私はすごく辛くなった またはないんだね。私は 結局そこからは何もなかった 帰り。ただ一人、夜道を歩く ここで千隼と会ったりして、とか。淡い、醜い希望を持って 何も、何もなかった 今日は楽しかった 友達と行ったのは、正直初めてだった ましてや好きな人なんて、嬉しかった でもさ、千隼は桜子が好きなんだもんね 桜子が好きなんだもん そうだよね もしかしたら、なんて思った自分がバカだった 楽しかったけどさ 会えて嬉しかったけどさ やっぱり会いたくなかったな 私がまだ千隼を好きなのも 千隼は私のことをなんとも思ってないのも 千隼は桜子のことが好きなのも 全部全部、再認識させられたから きっと今日は、人生で一番悲しい、寂しい夏祭りだった