短編小説みんなの答え:1

ひとを殺した手と小さな人情

 赤い屋根が影になっていました。  その影の中に身を寄せて、すこしでも自分が目立たないように願いながらどうにかなるのを待ちます。  ですがどうしても、犬はわうわう吠えてるし、家の前を何人か通ってるし、この家も自分も、目立つもんだなあと思うのです。なんもせずに、ほかの家の玄関につっ立って、こっちの方がよっぽど恥ずかしいんだと気づいて、さびてざらざらとしたドアの取手をつかみます。手から腕へのぼる冷たい感覚と、きゅーとした音がからだに残り、力を入れるとドアが開きました。  クリスマスのベル、のようなものが鳴ってドアが開きました。土足のまま家の中に入ると、バタンと空気を押し出して、白い塗装がところどころはげたドアが閉まるのです。鍵穴があったからあかないのかと不安でしたが、意外にも簡単にあいてしまいました。  はいよ、と少し遅れておじいさんの声がしました。それだけでジョンは安心して、茶色い帽子をぬぎました。こなれたカフェみたいだ、とジョンは思いました。  重みのある階段を下りる音が聞こえてきます。なんだか今度は緊張しはじめ、ぬいだ帽子をしわができるまでつかみます。  おじいさんが見えました。  サンタさんじゃん、そう思いました。赤い服が似合いそうで、不思議で、おもしろくて、ジョンは下から上へおじいさんを見つめます。金色がかった白い髪と髭がなんとも優しそうでした。 「おまいさんは、あれだね。ここらの子だね」  ジョンはギョッとしました。このおじいさんを見るのはどうも初めてな気しかしないのに、おじいさんはジョンのことがわかるのです。はいと言おうと思っても、喉はすうすうと空気を吸ったり吐いたりしかしないので、頷きます。 「まあいいよ、座りなさい」  おじいさんはジョンを黒い木の椅子に座らせました。ジュースが入ったコップをジョンにわたします。次にコーヒーを淹れると言い、ジョンに背を向けながら、「おまいさんは、私のことをどう思うのかね」とききます。  おじいさんが言ってることが、ジョンには理解できませんでした。そもそもジョンは、赤い屋根の犬がいる家に行ったらおじいさんが出てきて、なんでも悩みをきいて、助けてくれる。そうきいたからこのおじいさんの家をたずねたのです。 「別になんとも、優しそうな人だなあって」  おじいさんも、本当はいい人なんだろう。そうジョンは信じ込んでいました。それで正しいのですが、どうにも怪しい雰囲気をまとってそれがジョンに見えるのです。 「そうか。じゃあおまいさんの話をきこう」  湯気がたって天井にぶつかって消えます。そんなコーヒーを持って、おじいさんは微笑みました。ジョンのむかいに座って、「言いたいことがあるなら言ってみなさい」と、言うのです。 「じゃあ言うよ」  ジョンは一度笑いました。「ぼくね、昨日学校があったんだ」  幼いジョンはどこから話せばいいのかわからず、ただニコニコ笑うおじいさんを前に話し出します。「それでね、朝女の子の話になったんだよ。すっごい可愛くて、モテてる女の子の」 「それで、男の子とケンカになった。わけは言えないんだけど、ぼく怒っちゃってさ。それでけんかになって、そしたらね、その男の子が窓から落ちちゃったんだ」  あんまりにもスラスラというジョンに、おじいさんは逆に驚いてしまって、笑うのをやめます。そしてジョンの方を見ると、目を赤くしていました。泣いてしまうのかとはらはらするのですが、それをジョンに知られないようにと、またやわらかく微笑みます。 「死んじゃったんだ。で、校長先生と話した。お母さんも呼ばれてね。ぼくのお母さんとその子のお母さんが。すごい怒られた。許さないって。ぼく、どうすればいいかわからないんだ。学校は退学になっちゃったし、お母さんにも家を追い出されるかもしれない」  そしてわっと泣き出し、ぴたりと止めました。 「友だちからきいたよ。ここの家のおじいさんは、なんでも助けてくれるって」  幼いジョンはにやにや笑いました。おじいさんはなにがおかしいのかと、相手が相手なら怒るところでした。けど、ジョンを前にしてとがめる気にもなれないのです。 「一回家戻る。追い出されたらまた来るね。そのときは、きっとぼくも反省してるよ。いまはびっくりしちゃって、それだけなんだ。おじいさんもこまっちゃったよね」  ごめんね、そう言ってジョンはおじいさんの家を出て行きました。 長いのに読んでくれてありがとうございました! こんな家があったらいいな。 アドバイスとかあったらお願いします!

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