ひとり
「こんにちは、失礼します。」 武道場の扉を開ける。朝ならではの薄暗さ。まるで一人の私を歓迎してくれるように、武道場はその姿を見せてくれる。掃除をしているときも一人。トイレにいくときも一人。同級生や後輩が来ても、一人。私はいつも一人なのだ。 誰も話しかけてくれない。私が嫌いなのかもしれない。普通、同じ剣道部の仲間ならば、買い物にも誘ってくれるはずだ。けれど、同級生達は、彼女達は、誰も私を誘ってくれなかった。 悲しかった。 だけどそれでも良かった。 私も、彼女達が嫌いだからだ。 剣道人なのに、武道場に寝っ転がっていたり、騒いでいたり。極めつけは、私が怪我をしたときである。そのときは、道場に血が流れるほどに大変だったのだが、処置に来てくれたのは、ほとんど同校の人達ではなく、他校の人達であった。(その日は月2で中学生達が集まる合同練習会だった)ある程度の処置が終わり、親が来るまで一人で待っていた。ふと彼女達のいる後ろを振り向く。案の定私には目もくれず、笑顔で話している。結局、他校の男子などが心配しに来てくれた。 嬉しかった。しかし、彼女達は私を思ってくれないと分かった。 だから嫌いになのだ。 あの人達が勝つ度に。あの人達が笑い声をあげる度に。 憎しみが。 妬みが。 私の心を蝕んでいく程に。 顧問の先生は、私がいつも一人なのを気にかけてか、会う度に、 「ちゃんと仲間に入っていますか?」 と聞いてくる。首を横に振れば、私は先生に手を引かれ、強制的に彼女達の元へ連行される。 只でさえ嫌いな人達なのだ。私がそれを許可する訳がなかった。彼女達のところへ着いた後、私は水を飲みに行くふりをして、その場を去った。 この剣道部において、私の味方は恐らくいないだろう。 強い者がいつも勝つ世界なのだから。