めんげえコーヒーを飲んで【恋愛小説】
「めんげ。」 主に東北の言葉で、「かわいらしい」や愛らしいを意味する方言。 「…またそれ飲んでるの」 そう目の前の男の子、坂山くんにわたしはたずねた。 坂山くんは東北の中学校から来たひとだ。学生にしてはちょっと低くて落ち着いた声が特徴的。 そしてその声でわたしの問いに答える。 「甘ぇのは、好きじゃねーがらな。」 彼はよくコーヒーを購買でよく買って飲んでいる。今飲んでいるものだってそうだ。 なにか特別な理由があると思ったら、そんな特別な理由でもなかった。 「ふーん…苦いのに、」 「そうだべ?ま、おめとは違っで俺はお子ぢゃま舌じゃねえけどな。」 そうにやりと目を細めて笑う坂山くん。顔はそこそこ整ってる方だから、不意にもすこしどきどきする。 …って思ったけど、それよりもお子ちゃま舌とバカにされたのでむかむかした。 「別に……わっ私だって苦いものくらい飲めるし!」 坂山くんを見下ろすように背筋を伸ばして言う。 にやりとした目つきのまま坂山くんは、視線を逸らさずに 「めんげえな。……じゃあ、俺の飲んでみんべか?」 と飲んでいたペットボトルのコーヒーを私に差し出した。 いいよ!やってやると思って彼の手から受け取ろうとしたが、 普通に考えてみれば間接キスになる。 その回答が頭によぎった瞬間伸ばした手をひっこめて、坂山くんに言おうとする。 「いや!でも、それ…って、」 意識してしまう自分がいて、妙に言葉が捻り出せない。じわじわとなんだか体がほてってきた気がする。 そんなわたしのことを、坂山くんは目元の笑みを先ほどよりと深くしてこちらを見つめている。 「あぁ、間接キスって言いたいんだべ?」 おもしろくなってきたと言わんばかりに口元を緩めながらそう言う坂山くん。 「……なんで、分かってるのに聞いてきたの?」 恥ずかしい反面、気になるところもあった。 そういえば坂山くんとは出会ったばっかりだがものすごく仲がいい。 というより、ほとんど隣にいた。 だから、もしかしたら気があるのかな。なんて思っちゃったから。 「分かってんだべ?…おめのことがめんごくて好きだがら、だな。」 にやりとした顔は、すべてを見透かしたような瞳にみえた。 「…んな?図星の顔してんぞ。 ……でもよ、返事はいらね。俺が勝手にやっだ事だしな。」 そう坂山くんの瞳はだんだんと丸くなり、コギツネのような幼くて儚いような瞳で、私からそっと視線を外した。 私が黙ったままだから、坂山くんは私が嫌だと受け取ってしまったんだと思う。 ゴクリ、彼の手の中からコーヒーを奪い取り一口、口をつける。 苦い豆の風味と深い味が舌を刺激して喉を通った。 「いい。」 「……っ、どういう事だ…?」 珍しく焦ったような顔で、また私に目線を合わせるさかやまくん。 「……返事、いいって言ってんの。」 そう言うと目を少し見開いた坂山くんだったが、またにやりと笑った。 「そうけ。………俺の、初めて貰っでったな。」 坂山くんはコーヒーを持っていたはずの手を、口元に寄せ人差しゆびで自分の唇をなぞった。 「わ、わたしだって…そうだし、」 「ん、お互い様だべな」 いつもの柔らかい微笑みに切り替えると、私の手からそっとコーヒーを取り戻し真っ逆さまに傾け、ごくりと飲み干す。 「甘ぇな…おめがお子ぢゃま舌のせいでコーヒーが甘ぐなっぢまったなぁ?」 「もう、だからお子ちゃま舌じゃないっての…!」 「ふふ、めんげぇな。」 東北のほうからやってきた坂山くんには、いつでも見透かされてます。 * 方言、あやふやですみません…。 ここの坂山くんは、''誇張した''東北弁という認識でおねがいします。 「わたし」ちゃんは一応、瀬川って名前ですが、そこの今読んでくれている貴方でも当てはめて読めますのでお好きな方どうぞ…! ぜひ感想おまちしてます…!!