よるにチョコレートを食べてやる
「『ねえマルリ、お願い元に戻って!』」 「『マルリちゃん、そっちに行かないでよ、こっちに戻ろう!?』」 「『あははっ!そんな声かけで元に戻ったらボスの下についた意味無くなっちゃうよね。ふふっ、無理だよね♪』」 「『マルリ…!こっちに来…』」 「ちょっとカットカット!幸優里(さゆり)、もっと声出してー!」 「はい……っ」 わたしは霧島幸優里。14歳の中学2年生です。演劇部所属、性格は引っ込み思案でシャイで、好きなことは演劇。 いつもはずっと誰かのカゲにいて、絶対に他人に心を開かない私が演劇部を選んだのは、先輩のギャップがすごいから。 演劇部の先輩は個性豊かだ。しかし、役に当てはめると色が変わる。普段は笑わせキャラな先輩が闇堕ちした仲間を静かに怖く演じたり、しっかりした部長がおちゃらけたキャラを演じたり。 中でも私が尊敬してる先輩は… 「さゆり、おれだったらあのシーンは 入部した当初から、(おそらく私の性格を見抜いているのだろう)ずっと私のことを気にかけてくれている… 木村よる先輩。 女の子なのに一人称おれなの。すごくかわいいし、かっこいい! あ、さっきの笑わせキャラな先輩が闇堕ちしたキャラをする、っていうのはこのよる先輩。 今の『そんな声かけで…』って言うセリフを言ったのはよる先輩で、めちゃめちゃうまいでしょ? 私は、こんな自分を変えたかった。演劇部に入ったら、私もその役の中だけでも、性格を変えられる、そう思った。 でも現実はチョコレートじゃないから甘くない。 「よし、もう一回!」 ーーー下校ーーー 「さっゆりー!ねね、今度演技のレッスン行かない?」 「…行きたい,です!…いくらですか?」 「それがさ,無料なんだよねー!東京駅に有名な俳優さんが来て、ワークショップするらしくて!明後日だけど、会いてる?」 「空いてます!行きます!」 「んじゃ、そう言うことで、また明後日ね!」 ああ…やっと私に現実がチョコレートになるチャンスが来た! ーーー明後日ーーー 「あ、先輩!」 「もう始まってる、こっちこっちっ」 ーーー帰宅ーーー 「幸優里よかったね、演技少しは上手くなったんじゃない?」 「先輩のおかげです」 「あ、時間やばっ!きょうはありがと、またね!」 やっと私の現実がチョコレートになった…っ。 「ありがとうございます…よる先輩…!」 涙ぐみながら呟いた。