二人の思い出と初恋
「お母さん、お母さん」 小学3年生の真子は、野良猫を保護してあげようと猫を追いかけて来たら、 知らない道に来てしまった。 そして、その場にしゃがみ込んで泣いていた。 「お前、迷子か?」 ふいに、後ろから男の子の声がする。 振り返ってみると、そこには水筒にリュック、帽子を身に着けた 同い年ぐらいの知らない男の子が立っていた。 「立てよ、交番まで連れて行ってやるからさ」 そう言って私の手を取って交番まで連れて行ってくれた。 その男の子は、クラスの男子とは比べ物にならないくらい大人びていた。 変な冗談も言わないし、嫌な事も言ってこない。 しかも、手まで繋いでくれている。 その時は迷子になっていたのをすっかり忘れていた。 「ちょっと、真子聞いてたの?今の話」 気が付くと目の前に友達の紗季が立っていた。 「何?」 「だから隣の山下さん、うちのクラスの斎藤君の事が好きなんだって」 「へえ」 確かに斎藤はモテるらしい。 そして、斎藤は偶然にも私の隣の席だ。 「もう、真子って恋愛の話になるといつも『へえ』しかいわないじゃん」 「だって恋愛ってよくわからないんだもん」 私もいつかは誰かを好きになって、幸せな時間を過ごしてみたいと思った事はある。 だけど、話を聞いているとよくわからなくなるのだ。 「ああ、真子にはあの男子しかないのか」 「何々?『あの男子』って」 すると、隣の席から斎藤が話に加わってきた。 「実はさ…」 紗季が斎藤君に私が」小さい時にあった話をした。 「へえ、そんな事があったんだな」 話を聞き終わった斎藤が私の顔を見る。 「でもさ~、その子がどこの子かわかんないんだよね」 実際、次の日にその子を探しても見つからなかった。 今はもう、顔も覚えてない。 「もしかしたら、あれが私の初恋だったのかもしれないね」 私が言い終わるとちょうど、休み時間が終わるチャイムが鳴った。 チャイムがなって席に座った斎藤は、自分の顔が真っ赤になっている事が ばれないようにしていた。 なぜなら、真子が話していた男子が自分の事だったからだ。 実はあの時、冒険がしたくて歩いていたら迷子になっていたのだ。 たくさん泣いた。そしたら、交番に向かう途中に泣いている女の子を見つけけた。 泣いていた事がばれないように、いつもより大人びて見えるよにしていたのだ。 『もしかしたら、あれが私の初恋だったのかもしれないね』 脳裏に真子が言った言葉がよみがえる。 「俺もだってんの」 誰にも聞こえないように、斎藤は呟いたのだった。